51.05 ホロゴンドラマ3「2008年11月10日長崎三日目」5 菱田春草はホロゴン使い?
1898年(明治31年)、日本画家菱田春草は「寒林」を描きました。
横幅3メートルもある大きな六曲一隻の屏風絵。
今から100年以上も前の水墨画なのですが、
私にとっては大変に嬉しい趣向が凝らしてあります。
なんと周辺減光。
巨大な森の中、朝のようです。
倒木も見え隠れする岩だらけの大地、
その中央、大きな岩の上に2匹の猿、親子でしょうか?
背景は霞んでいて、林が重なっています。
でも、猿たちの背後だけ、ぐっと遙か向こうまで開いています。
林を構成する木々の数も、猿の背後だけ少なくて、
両サイドに行くに従って、厚みを増すようなのです。
光の量も、木々の量も周辺が暗くなるように調整されているのです。
春草はこの作品にだけ、周辺減光の趣向を凝らしたのではないようです。
他の作品も多かれ少なかれ、周辺に行くに従って暗くなっています。
このような仕掛けが春草の考案によるものかどうかは分かりません。
でも、そんな美術史的な考証は忘れましょう。
肝心なことは、春草が周辺減光を見事に使って、
寒い冬の朝の澄み切った空気感を見事に描写していることにあります。
なぜ春草はこんな仕掛けを思いついたのでしょうか?
やはり、現実に寒い朝の光に照らし出された林を確認して、
周辺に従って暗くすることが正しい表現方法だと考えたのではないでしょうか?
私にとってちょっと大切なことは、
ホロゴンの周辺減光は視覚的に見て、欠陥と言うべきではないこと。
何も絵を真似しようとは思いませんが、
私自身がホロゴンに出会って一番嬉しかったことは、この周辺減光にあるのです。
ホロゴンの周辺減光を欠点だと思ったことは一度もありません。
あまりにも自然で、かつ中心主題を巧みにもり立ててくれるのですから、
周辺減光はホロゴンの強力な武器の一つなのです。
by Hologon158
| 2009-02-12 16:06
|
Comments(0)