わが友ホロゴン・わが夢タンバール

52.41ホロゴン外傳7「1989年8月パキスタン」41 ナンに目がなくなったのは、このときから

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名前は忘れましたが、小さな町に泊まりました。
ストリートをあちこちさまよいました。
当時、私は50ミリ、85ミリをメインにしていましたし、
スナップが中心でしたから、かっこうの被写体も見つからないまま。
この町のスナップなど、ろくなものは残っていません。
旅の仲間数人と連れ立っていたのですが、
とある家に偶然行き着きました。
ナンを売る店でした。
一行の一人は、一家を残して旅に出た主婦の女性。
この女性、こんな旅を今後することはあるまいとお考えで、
もう全精力を使って旅を全身でエンジョイしておられました。
その彼女がいきなりその店にも飛び込んでしまいました。
引きずられるようにして、私たちも入りました。
男達が数人たむろしていました。
その一人、ナン作りの職人が出来たてのナンを一枚振る舞ってくれました。
その後見たことがないほどに大きくて分厚いナン。
みんなでちぎって分けました。
私がナンに目がなくなったのは、このときの体験から。
あつあつ、ふかふかのナンの、それはそれは美味しかったこと!
その男のポートレートを撮らせてもらいました。
聞くと、アフガンから逃れてきたとのこと。
彼の眉間の深い刻み、
眉間のけいれんするようなシワ、
そして、なによりも彼の目、
それらを見るたびに、
アフガンが現在まで歩んできた歴史を思わざるを得ません。

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by Hologon158 | 2009-03-01 21:10 | ホロゴン外傳 | Comments(4)
Commented by yoshipass at 2009-03-02 00:17
最初の真正面からとらえたポートレートも素晴らしいですが、
二枚目、彼の視線の落とし方がいろいろなことを物語っているようで、
雰囲気があり、とても気になる一枚です。
素敵な写真ですね!!
Commented by top-to-toe at 2009-03-02 00:47
3枚目。すごく渋い!
後ろの壁がまたいい!

んー。こういうの見ると、人を撮ってみたくなります。
Commented by Hologon158 at 2009-03-02 11:44
re)yoshiさん
ありがとうございます。
落ちた視線、土間の亀裂、垂れた手、古びたヤカン、古びた壁、
みんな、彼の心の悲しさ、空虚さをこだましている感じで、
ちょっと悲しい写真になりました。
Commented by Hologon158 at 2009-03-02 11:47
re) top-to-toeさん
ありがとうございます。
アジア諸国には、つらい人生をしっかり生きている感じの人がいます。
だから、絵になります。
日本では、人は絵になりにくいですね。
田舎に行くべきでしょうね。
でも、ホロゴンでは撮れない写真。
でも、人生、なにごとも選択です。