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94.24 ホロゴンデイ27「2009年5月2日滋賀木之本も路地裏宝庫」24 のぞき、のぞかれ

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すだれって、誰が発明したのでしょうね?
屋内からは自由に見渡せ、屋外からは屋内が見えない。
風だけが自由に通ってくれる。
夏の日本家屋には最高の可動式フェンスですね。
平安時代の御簾、几帳がすだれの原形なのでしょうか?
平安時代の貴族の女性は、この御簾にプライバシーを守られつつ、
自分たちは自由に外部を見通すことができたわけです。
イスラム社会のチャドルは、携帯式御簾と言えそうですね。
でも、この御簾、すだれにはちょっと問題があります。
夜になると、形勢が逆転する。
つまり、内外の明暗を一瞬にして逆転することによって、
外から見られて、自分は見えないということになりかねない。
前にも一度書きましたが、源氏物語の「蛍」の巻にその逆転現象が登場します。
光源氏は、自分が養女のようにしてかわいがっていた玉かずらの姫君を、
弟の兵部卿の宮に交際させようとします。
宮を御簾の前に座らせてから、玉かずらの姫君の周りに蛍をどっと放すのです。
一瞬、姫君の麗しい姿、容貌が蛍の光に浮かび上がります。
「ほのかなれど、そびやかに(すらりと)臥したまへりつる様体のをかしかりつるを、
(宮は)飽かずおぼして...」
紫式部の艶麗なる描写は、この時代にも、後の時代にも比較を絶しています。
この天才が作りだした、源氏物語でも最高に美しいシーンがこれなのです。
紫式部は、女性でありながら、男性がどんな状況で女性を美しく感じるか、
よーく知っていたのです。
一言で言えば、「のぞき」
つまり、隠されている美を一瞬のぞき見るときこそ、最高の魅惑のシーンなのです。
だから、源氏物語では、登場する美女たちは軒並みのぞかれてしまうのです。
光源氏って、少年の頃はほとんどのぞき専門だったのですから、かなり悪だったわけです。
物語中比類のない美女は、私には、紫の上と思えるのですが、
まだ若紫と呼ばれる少女のとき、光源氏にのぞかれ、
臈長けた熟年の美女になったとき、光源氏の息子夕霧に御簾の隙間からのぞかれてしまいます。
ずっとのぞきの被害者だったわけですが、
のぞかれていることに気づいていないので、まったく無防備、
それなのに、もうどうしようもないほどに、匂うようにうるわしいのです。
それがほんとうの美女ですね。
世界文学史上、もっとも美しく理想的な心映えの女性、それが紫の上!
私はそう信じています。
(ちなみに、川端康成の「伊豆の踊子」で、湯治場で、主人公が踊り子を見初めるシーン、
あれは光源氏が、まだ幼い若紫を見初めるシーンの「本歌取り」であると、私は考えています。
例によって、私だけの独断なので、信じない方が安全かもしれませんが...)
というわけで、考えてみますと、源氏物語は世界最高ののぞき文学と言えるかもしれません。
そして、御簾は、源氏物語におけるのぞきの最強の小道具だったのかも?
(これも私だけの独断なので、信じない方が安全かもしれませんが、
私自身は、この独断にかなりの魅力を感じています)
by Hologon158 | 2009-07-25 00:40 | ホロゴンデイ | Comments(0)