わが友ホロゴン・わが夢タンバール

102.05ホロゴンデイ31「2005年11月12日大阪御堂筋の週末は暇で暇で」5 後ろ姿も大事だね

前回、ヤスパースの言葉を思い出したので、彼の「哲学的自伝」を取り出して、
その個所を探したのですが、見つかりませんでした。
代わりに、もっと素敵な文章を見つけました。
ヤスパースは、自分の生涯の親友のお姉さんゲルトルードと結ばれ、
生涯にわたって愛し合います。
その出会いのシーン。

   「私がゲルトルードの部屋に彼女の弟と一緒に初めて入ったとき、
   この瞬間を私は忘れることができません。
   彼女は大きな書斎机に向かって座っていたのですが、
   部屋に入った私たちに背を向けたまま立ち上がり、
   ゆっくりと本を閉じてから、私たちの方に向き直りました。
   私の彼女の一挙手一投足を見守っていたのですが、
   その振る舞いは、飾らず、型にもはまらず、落ち着いた明るさのうちに、
   無意識にも彼女のこのうえなく清純で気高い魂をいかんなく表していました。
      (中略)
   出会いの瞬間から、私たちの間には、名状しがたい、けっしてあり得べきこととは
   予期されなかったような共感が響き合ったのでした」

そして、自分たちのことをこう総括しています、

   「このとき哲学というものの意義は一変し、
   だてやあだではすまないものになり始めました。
   私どもは哲学において結ばれましたが、目標を達成したのではありません。
   ですから今日に至るまで、一本の長い人生行路を共に歩いてきたのです」

ヤスパースの哲学の基本概念、「実存とは交わりであり、愛しながらの闘争である」は、
彼とゲルトルードの交わりそのものから生まれ出た実感だったのです。
ヒトラーのユダヤ民族殲滅政策の下で、
戦時中、ユダヤ人であるゲルトルードは風前の灯火となり続けました。
でも、いかにヒトラー政権と言えども、大哲学者の妻に手を出すことはできなかったのです。
妻を守るために、ヤスパースはすべての地位を捨てて、
いかなる言動も慎んで、政権から姿を遠ざけ、逼塞状態で過ごしました。
そのときの体験が二人の愛をさらに高めたことは言うまでもありません。
偉人の生涯にはこのように麗しい結びつきがあったのですが、
この女性は、そんな結びつきを、後ろ姿による立ち居振る舞いだけで造り上げたのです。
偉人の妻にふさわしい、偉大な魂を感じさせるお話しではありませんか?

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by Hologon158 | 2009-08-21 21:54 | ホロゴンデイ | Comments(0)