わが友ホロゴン・わが夢タンバール

120.43 ホロゴン外ドラマ1「2009年11月北京の旅は酷寒から始まった」43 指導者の資質

クラブの写真展や絵画展でいつも興味深くチェックするのは、
指導者の作品の質です。
ある水墨画展で、会員の水墨画という水墨画、めっちゃめちゃに下手でした。
運筆の初歩さえもできていない。
ワラワラとふるえる筆で、ためらいがちにぐにゃぐにゃの描線。
これじゃ、展覧会なんてものじゃない。
ところが、先生だけ、目覚ましいほどに見事な絵。
これを見て思ったのは、ただ一つ。
この画家、先生などしない方がいい。
ちゃんと指導できないのですから。
たいていの写真展の場合、その逆が起こります。
写真を見ても、どちらが先生か、どちらが生徒か、わからない。
こんなことでは、なにが起こるか?
生徒たち、根拠なく慢心します。
「俺は先生よりもうまい。
先生はプロとして、その道で食っている。
ということは、俺もプロになれる!」
妻から聞いた話です。
女性写真研究会という初心者向け講座に参加したことがあります。
先生、初心者の女性たちに向かって、
写真撮影の原則について、なにやらこみいった講義をだらだらと続けたのです。
半分は、全身が寝てしまい、残り半分は頭だけ寝ていました。
先生が、なんと「色温度」についてまで講義に及ぼうとしたとき、
ある女性がすっと手を挙げて、
「先生、私たち初心者なんです。
そんな話をしていただいても、一言もわかりません。
もっと初心者がわかるような話をしていただけませんか?」
先生、ぎょっとして立ち往生。
汗ぐっしょりになって、口をもごもご。
すると、さきほどの女性、持参の魔法瓶からお茶を注いで、
「先生、お茶飲んで、落ち着いて話してください」
先生、完敗ですね。
先生の方は、ただのアマチュア先生なので、自分が勉強した本だけしか資料がない。
相手を見て、その人の理解度に応じて、話し方、話す内容を適切に変更する、
そんな能力もない。
これじゃあ、生徒にバカにされるのがオチ。
昨日の写真展の指導者吉田正さんは、こうした自薦にわか指導者とはまるで大違い。
まず、写真展に寄せた作品は、圧倒的に重厚で、
正真正銘の写真家でないと撮れない質の作品。
しかも、(ここからがすごいのですが、)
写真をはじめてたった3から6ヶ月という初心者たちに、見事、
先生の精神を汲んだ品位と節度のある、個性に満ちた写真作品を撮らせている。
そして、その作品ごとに、それにふさわしいマットとフレーム、見せ方を選択し、
しかも、全体として、一つの調和を保つようにプレゼンの粋をこらしている。
昨夜、電話で、そのことを言いますと、吉田さん、
「そうなんですよ、ずいぶん苦労したんですよ。
ぎりぎりまであれこれ苦心しました。
おかげで、なんとか文句のないものができました」
静かな自信がみなぎるお言葉でした。
生徒さんたちに聞いたことから推測しますと、
メンバーに短期間に一定水準の質で、その人独自の個性のある写真を撮らせるために、
先生がとっている方策は、その人の良いところ、伸ばすべき長所をほめること。
つまり、先生の好みの方向に誘導して、その人の能力を制限しないこと。
そして、先生のさわやかな心を感じ取ってもらい、
写真を心から楽しんで撮ってもらうこと、なのです。
こんな指導者、写真、絵画の集団にいつも欲しいものです。
でも、ムリですね。
そんな指導者、ほとんどいないのですから。

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by Hologon158 | 2009-11-16 00:31 | ホロゴン外ドラマ | Comments(0)