わが友ホロゴン・わが夢タンバール

156.21 ホロゴンデイ48「2006年10月8日心斎橋には絢爛濃密な秋があった」21 この世と思えない体験

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若い頃読んだカール・ヤスパースの「精神病理学総論」に、
ドストエフスキーのてんかん発作時の症状を記載されていました。
かなり前に処分してしまったので、精しい内容は記憶していません。
たしかすべてが黄金色に輝き、燃え上がるように流動するのでした。
「カラマーゾフの兄弟」にも、そんな発作時の体験記録らしい描写が見られました。
このような症状は、大脳ニューロンの過剰な放電に起因するのだそうです。
でも、そのような体験は、ドストエフスキーのような天才にとっては、
この現実世界に対する認識を一変させるほどの、
ある種の神秘的体験だったのかも知れません。
てんかんは確かに重荷だったでしょう。
でも、このような体験がドストエフスキーになにかを与え、
ドストエフスキーの精神の振幅を増幅し、深みを与え、
だからこそ、偉大な小説家となりえたのかも知れないと考えることができそうです。

私がもつ神秘的体験はたった1回です。
    奈良飛火野のなぎの原生林、
    その林間地に立っていたとき、
    夕日を真っ向から浴びていたのですが、
    ふっと東側に振り返ったのです。
    そのとき、林が突然くれないに燃え上がったのです。
    ほんの数秒。
    その後、すっと消えて、グレーのなぎの樹林がそこにひっそりとありました。
太陽の仕業であることは間違いがないのですが、
そんな現象についに生涯一度も再会せず。
でも、その一度の体験はまだ私の脳裏に焼き付いています。
この世には、この世と思えない体験をさせてくれる瞬間がある!
私はそのことを知っただけ十分です。
また、いつか日常とは異質ななにかに出会う可能性がある、
そう信じて生きていけるのですから。
by Hologon158 | 2010-05-19 00:07 | ホロゴンデイ | Comments(0)