162.167 ホロゴントラベル2「2005年9月青森は弘前の町の風情にしびれたね」167 なんだか好きに
昨夜、友人OYさんが電話をくれました。
私に、SPレコードのすばらしさを教えてくれた人。
この人の戦前戦後の音楽演奏に関する造詣、蘊蓄はただならぬものがあります。
どうしてそこまで知ることができたのか、いつも驚嘆させられます。
彼は、SPの会を定期的に開いています。
いつも30人ばかり集まります。
そこで、さまざまなジャンルの掘り出し物SPを聴かせるほですが、
その際に、OYさんが蘊蓄を傾けて解説をするのです。
その分かりやすいこと、おもしろいことは、昔の映画評論家淀川長治さんそこのけ。
本物の知識でないと、こうは行きませんね。
彼の今日の話題は、夭折の名ピアニスト、ディヌ・リパッティのこと。
彼のショパンのワルツ集SP16枚組をオークションで競り落としたということで、
意気揚々でした。
その話のついでに、彼がちょっと楽しい声楽家を教えてくれました。
フローレンス・フォスター・ジェンキンス
大富豪夫人で、ソプラノの音楽を愛し、演奏会を開催し、レコードを出したのです。
この人に付けられたあだ名、キャッチフレーズがふるっています、
超絶音痴!
早速You Tubeで検索。
モーツァルトの「魔笛」から「夜の女王のアリア」
Florence Foster Jenkins 2006
(http://www.youtube.com/watch?v=xdLyL2_mFaA&feature=related)
音声だけのファイルだと、確かにひどい。
でも、このコンサートシーンを見て、感じました。
この人、楽しんでるよ!
それも、心の底から!
観衆も、いやならこなければよいのです。
でも、かなり入っているようです。
しがらみでおつきあいの人もいるでしょう。
でも、無関係の人だっているはず。
そんな人は、ひどい音楽を聴かされることがわかっているのにやってきている。
この人の心を感じるから、わざわざ来ているのです。
絶対に間違いを許さないのが、クラシック音楽。
とりわけ楽器のない声楽は、厳しいですね。
いつも安全網のない高みで、絶体絶命の綱渡りをするようなものです。
いきなりハイノートをバンと発声しなければならない。
ヴェルディのオペラ「アイーダ」冒頭のラダメスのアリア、
プッチーニのオペラ「トスカ」冒頭のカヴァラドッシのアリアもそうです。
ほんのちょっとせりふ的なやりとりをした後、
ただちに全力投球でアリアを歌わなければならないのです。
ひたすら自分の能力を信じて、正しい音程で歌い出さなければならない。
賭けみたいなものです。
音がずれたりすると、キャリアそのものを失いかねないのです。
ところが、ジェンキンス夫人は、そんなリスクなんかぶっとばしてしまいます。
なんでもいい、とにかく声が出たら、
それがどんなに楽譜からかけ離れていようと、知ったことか!
そう考えて、気づきました。
なんだ、この人、ぼくと一緒なんだ。
完璧な画像をどこまでも追求するデジタルカメラの世界から遠く離れて、
露出も構図もカラーもシャープネスもなにもかも異常にずれている写真を、
誰がなにを言おうとも平気でバリバリ撮って、ブログにバリバリ掲載しているのです。
超絶ど素人写真!
こんな風に考えると、
ジェンキンス夫人のこと、なんだか好きになってしまいました。
by Hologon158
| 2010-07-30 17:55
| ホロゴントラベル
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