わが友ホロゴン・わが夢タンバール

186.11 ホロゴンニュース「ちびだけど、凄いレンズがやってきた!」11 トン・コープマンのバッハ


ペラール35mmf3.5のつらいところが一つあります。
    ズミクロン、ズマロン、ビオゴン、ディスタゴン等々、
    競合するレンズたちが赫々たる名声を誇る伝説的レンズばかり!
    ズミクロン、ビオゴンのようなカリスマ的なオーラに包まれるものさえあります。
    しかも、これらのレンズは例外なく、実にクラシカルな工芸品。
こんな巨人たちの間に挟まれて、生き延びるためにはどうすればよいか?
    こんな風に試し撮りをさせていただいて、感じることはこうです。
    逆手にとる、いわばからめ手作戦しかありませんね。
    存在感が希薄なら、存在感のなさを売りものにして、
    黒子のサブカメラに徹すること、これではないでしょうか?

宮崎さんもそれを狙っておいでなのでしょう。
    まず、高性能かつ高品位の描写力を与えて、ユーザーの好き心をそそり、
    軽量で小さい沈胴レンズにして、携帯性を図り、
    黒の筐体にして、わざわざ存在感を際立たせないようにしておられます。

    バルナックのライカⅢfかライカCLが良さそうです。
    つまり、使い道と生き残る道は十分ある!


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昨日は、大阪のザ・シンフォニーホールのコンサートに言ってきました。

    バッハ演奏家のトン・コープマンのバッハ・リサイタル。

トン・コープマン、ご存じでしょうか?
    ヴァルヒャやレオンハルトのような、
    厳格正統のバッハ演奏家たちの後に続いてやってきた、
    偉大なるバッハ演奏家ですが、先達とはかなり色合いが違います。
    オランダ人という出自が影響しているのかも知れません。
    ゲルマンとフランスの両方の文化に挟まれながら、
    独自の文化を形成してきたネーデルランド文化。
    まさに隣接両文化のよいところを巧みにミックスして、消化している感じがします。
    とても柔和な肌触りですが、骨格はしっかりしている、そんなバッハ音楽。
私にとって、彼のコンサートは3度目。
    今回も大いに満足させられました。

曲目は、こうです。

    第一部 (チェンバロ)
        半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
        平均率クラヴィア曲集 第1番
        マルチェロのオーボエ協奏曲のバッハ編曲
        パルティータ 第4番

    第二部 (オルガン)
        トッカータとフーガ ニ短調
        18のコラール第4番「おお愛する魂よ、汝を飾れ」
        同 第3番「バビロン川のほとりで」
        パッサカリアとフーガ ハ短調

おわかりでしょう。
    まるでオルガン音楽啓蒙のための入門曲集。
私にはぴったりです。
    心がどんどんと大きく広がってゆくのを感じることができました。
    音楽とは、永遠への窓なのです。

第一部のチェンバロは、かなりひそやかなサウンドでした。
    でも、これは私たち聴衆がコンサートホールで常時聴く、
    標準的サウンドとの差を敏感に感じとって、
    小さいと思うだけなのです。
第二部に入ると、
    もうオーケストラそこのけの囂々たるオルガンサウンドが私たちを圧倒しました。
その後、2曲のオルガンのアンコール曲のあと、
    最後にチェンバロで、フランスバロックのパープシコード舞曲を弾いてくれたのです。
    そのサウンドは、オルガンの後なのだから、
    なおさらか細く聞こえただろうと推測されることでしょう。
    ところが、どっこい、その逆で、
    チェンバロはくっきりと粒立ちよく、見事なサウンドで響きました。
    不思議です。

このトン・コープマンという人、好きですねえ。
    演奏のあと、いつくしむように、チェンバロを撫でました。
    このホールは、両袖にすり鉢状の2階席があります。
    たいていの演奏家は、この両袖の聴衆を無視します。
    せいぜい、演奏が終わった後のリラックスムードのときだけ、
    ちょっと見上げる位で済ませてしまいます。
    ところが、コープマンは、最初から最後まで、
    挨拶は、前、右、左と同列に挨拶します。
    チェンバロが中央にあるので、左袖2階席は相対的に高くなり、
    客席が見えにくいので、左に挨拶するときは、わざわざ伸び上がります。
    客にも楽器にも礼を尽くす、とてもあたたかい人物なのです。
    
好きになれないではおかれない人なのです。
    ひょいひょいと伸び上がりつつ歩く姿、
    とても愛嬌がある、髭に包まれたご面相、
    そして、ニッと笑う笑顔、
    全部合わせて、白雪姫の七人の小人そっくり。
    だから、こちらにも自然笑顔が浮かんでしまいます。

でも、45年間のバッハ演奏のキャリアーは、まさに伝説です。
    いつものことですが、
    パッサカリアを聴いていると、だんだんと自分の背が伸びてゆき、
    もう矢でも鉄砲でも持ってこい状態となりました。
バッハがオルガンを演奏する姿を見た人が書いています。
    今、そこで音楽が生まれ出てくるようで、
    まさに神のようであった。
トン・コープマンに、このようなバッハの化身を見る思いがしました。

    素敵な人物
    素敵な音楽
    素敵な一日でした......
by Hologon158 | 2010-11-15 16:09 | ホロゴンニュース | Comments(0)