193.39 ホロゴントラベル8「2005年2月25日、岡山牛窓は絶好のホロゴン日和」39 我らが樫本大進君
サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニーの演奏で、
チャイコフスキー「クルミ割り人形」全曲を手に入れました。
とてもメリハリのきいた演奏で、楽しいですね。
私は、チャイコフスキーのバレー音楽のなかで、
「クルミ割り人形」が一番好きなので、余計に気に入りました。
この曲くらい、多種多様の美しい音楽が詰まっている曲も少ないのでは?
CD2枚組に、DVDが一枚ついていて、
ベルリン・フィルの貫禄の演奏シーンを見ることができます。
コンサートマスターはもちろん我らが樫本大進君。
なかなか貫禄があって、しかも、弓さばきは明らかに違います。
颯爽として、鮮烈かつセンシティブなのです。
安永徹さんに続いて、日本人として二人目というのは壮挙ですね。
超絶名人ぞろいの楽団をひっぱっていかなければならないのです。
というより、引っ張っていけるという、ある種の確信がないと、
ベルリン・フィルは彼を選ばなかったでしょう。
おそらくウィーン・フィルとベルリン・フィルのコンサートマスターというのは、
演奏家としての最大の勲章なのではないでしょうか?
コンマスということで2つ逸話を思い出しました。
1 指揮者の友人から聞いた話。
この友人、10回以上、ベルリンフィルを本場で聴いている人。
晩年のカラヤン、かなり衰えていて、「田園」の出出しで、
大ぽかをやってしまったのです。
静かに始まるところ、
あの断末魔のジェスチャーで運命の出出しを振ってしまったのです。
運命の出出し3連音は、半拍遅れで入る、とても難しい場面で、
名指揮者でも振れないことがあるそうです。
まして、いかに名人揃いのベルリン・フィルでも、
この振りで、田園を弾き出すことはできません。
私が友人はかぶりつきにいたし、また指揮者ですから、当然気づきました。
でも、その瞬間、コンサートマスターの安永さんが足をドンと床にたたきつけ、
田園の出出しを合図したので、まったく問題なしに演奏は始まったそうです。
これがコンマスの出番なのだそうです。
危機的状況には、権威がないと、ひっぱっていけません。
さすがに1983年、
ベルリンフィル史上初の一般奏者からの昇格を果たした人ならではですね。
2 別の友人がヴァイオリニストから聞いた話。
どこの楽団か聞き忘れましたが、指揮者が出出しを振った途端、
コンサートマスターが1拍だけ飛び出してしまったそうです。
今度は、コンマスの方が大ぽか!
演奏はただちに全合奏に移ったので、事なきを得たのですが、
この話をしてくれたヴァイオリニストが溜息をついて、
「そのコンサートマスターの気合いのこもった第一音、
これが忘れられないんですよ。
もう、聞いたことがないほどに美しい音でした。
もうあの音が聞けただけで、幸せでした。」
ソリストとしても一流でないと、務まらないとも言われます。
それにしても、失敗で人を感動させるのですから、凄いですね。
たしか樫本大進君は、3年間は試用期間。
その後に、ベルリン・フィルの楽団員の投票で決まると聞きました。
私もザ・シンフォニーホールで、バッハの無伴奏等、無伴奏特集を聞きました。
見事な演奏、堂々たる落ち着き振りでした。
彼なら大丈夫でしょう。
Good Luck!
by Hologon158
| 2010-12-11 22:08
| ホロゴントラベル
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