316.32ホロゴンデイ83「2006年9月2日大阪の庶民の町八尾をホロゴン片手に」32 写真はアート?
写真はアートか?
よく問われる問いです。
もちろん、アートである写真もあれば、アートでないものもある。
それが正解、と言いたいところですが、
全面的にアート性を否定する見解だってあります。
その理由は、
1 複写を前提にしていること
2 プリントが永続的な保存に耐えないこと
3 メカニカルな手段で作成されること
でも、版画だって、複写を前提にしていますし、
鋳造の彫刻だってそうです。
音楽演奏ときたら、演奏の進行につれて、どんどん消えていきますね。
永続的な保存に耐えないアートメディアはいくらでもあります。
確かに写真はカメラとレンズの所産。
でも、絵だって、筆と絵の具の所産。
でも、絵を描くのは画家であるのに対して、
同じカメラとレンズを使えば、同じ写真が撮れることは確か。
でも、道具は大量生産向きであるとしても、
撮られる写真そのものは、いわば一期一会的な性格です。
どんなにライカを使っても、カルティエ=ブレッソンの作品は撮れません。
そして、その写真に人間的真実が写されたとき、
見る者は美しいと思い、圧倒的に感動させられます。
アートとは人に感動を与えるものであると定義すれば、
写真作品の中にはアートがあります。
ただそれだからアートであると言える分野はありません。
絵画だって、音楽だって、アートと言えないものが一杯混じっています。
むしろアートはどんな分野でも稀少です。
アマチュア写真家にだって、アーティストが居ます。
十数年前のことでした。
スコットランドの小さな町カランダーで、
年配の紳士に家に招かれたことがあります。
一枚のモノクロームプリントを見せてくれました。
彼の息子の作品なのです。
ニコンで撮った、父はそう誇らしげに言いました。
漆黒の土手斜面に細い剣のような葉が
あちこち向きながら林立し(表面の光沢の反射で浮き上がっている)、
その合間に白い花がびっしり点在しています。
目も醒めるように美しい、まさにビンテージプリントでした。
まるで水墨画のような作品でした。
でも、フェロタイプでしっかり光沢が付けられたプリントは、
まぎれもない写真でした。
あれほどに美しい、
あれほどに繊細な感受性を感じさせる、
あれほどに心を揺さぶられるネーチャー作品を、
その後ついに見ることができないまま。
あの写真はたしかにアートでした。
結局、アートとは、
私とあるものとの正面衝突のようなもの。
その一瞬、永遠の光りが心を貫きます。
この一瞬を私は死ぬまで忘れないでしょう。
こんな心に永続的な感動を刻み込む体験こそ、アート。
絵も音楽も彫刻も写真も、このアートの媒体にすぎないのです。
by Hologon158
| 2012-04-19 00:30
| ホロゴンデイ
|
Comments(0)