わが友ホロゴン・わが夢タンバール

316.49 ホロゴンデイ83「2006年9月2日大阪の庶民の町八尾をホロゴン片手に」49 叩けなかった



今朝、ふと思い出したことがあります。
あのとき、私の趣味の生活は変わっていたかもしれない、
そんな出来事、というか、
結局起こらなかったので、無出来事。

むかし、ある町に住んでいたときのことです。
まだ30歳になったばかり。
リコーダーを弾きたいと考えついたのです。
教則本を買い込み、
当時も今と同じ高級志向の私だったので、
ドイツのグレナデイラ製を、ソプラノ、アルト2本取り寄せました。
もちろん各種名曲のCDもどっさり手に入れました。
そうして独学していたのですが、当然のことながら、
自分が上達しているのやら、一進一退を繰り返しているのやら、分からない。
それでも、毎日毎日、のべつまくなし吹いていました。

    そんなある日、帰宅の途中、初めて通る路地を抜けたのです。
    そのとき、リコーダーの音が聞こえてきました。
    簡素なメロディーなのですが、なにか心をとらえる響きがあります。
    無伴奏。
    実演のようにも思えますが、立ち止まったり、淀んだりしません。
    いつまでもしっかりと弾き続けています。

    CDかもしれない。
    数分聴き続けましたが、どちらとも決めることができないまま。
    その後今に至るまで、聞いたことのない曲。
    それだけに、練習曲の可能性が高い。

    実演なら、この人に教えてもらえるかもしれない、
    そう閃きました。
    でも、扉をたたいて、CD鑑賞中だったら、ばつが悪い。
    ためらったあげく、とうとう扉をたたかないままに立ち去ってしまいました。
    
    その後2度ばかりお宅の前を通りましたが、沈黙。
    ついに、確かめることなく終わりました。

それから何度も何度も、思い出しては、その都度思案します、

    あれは、実演だったんだろうか?

リコーダーは、友人たちと合奏したりして10年ばかり楽しみました。
呼吸法もいつしか会得して、それなりに上達もしたのですが、
結局は、ただの独学に終わってしまいました。

今、揚琴をプロの演奏家に教えてもらって、悟りました。

    楽器ほど、専門的な教育を必要とするものはない!

    独学は、どこまで行っても素人の手すさび。
    どこかで演奏して、やんやの喝采を浴びても、
    聴く人が聴いたら、見る人が見たら、
    ただの素人だとたちどころにばれてしまいます。

あのとき、それがばれない人が弾いていた、
これだけは確かです。
当時、リコーダー教室などありませんでした。
リコーダーの草分けのフランス・ブリュッヘン、デビット・マンローたちも、
実は独学でしたが、
これはフルートなどのプロの才能ある人たちが
リコーダーの演奏技法を改めて開発した歴史。

もし、あのとき私が扉をたたいて、
プロの演奏家に教えてもらうことができたとしたら、
私は2つのことを学んだでしょう。

    1 リコーダーの演奏技術。
    2 すべて楽器は先生に習うべきだということ。

現実にはそんなことは起こらず、
私はその後もあれこれと独学を通す人間になってしまいました。
実は大いなる機会を逸したのかもしれないのです。

    あのとき、扉を叩けばよかった、
    いつもそう思います。
    でも、叩けなかった。
    若かったのですね。



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by Hologon158 | 2012-04-23 18:24 | ホロゴンデイ | Comments(0)