わが友ホロゴン・わが夢タンバール

394.03 ホロゴン外傳99「2012年5月19日 鶴橋とは場違いな場所にタンバール」3 人生まだまだ



土曜日の続き。

有野永霧展、拝見しました。

美術ホール5、4階の2フロアーに144点、
集大成だけに、大盤振る舞いの感じは否めませんが、
5階モノクロームの広大な空間が圧倒的でした。

さすがに永霧先生がご自身で大伸ばしに選択された作品は
いずれも強烈なインパクトでした。

虚実空間・都市」1979年大阪の縞模様の影の中を行く男たち、
この写真はチケットにもプリントされていますが、とても印象的。

  50過ぎの背広姿の男性がこちらに向かって歩いてきます。
  がっしりとした体躯と、長年の辛苦を表情にたたえた感のある容貌、
  さながら人生の牢獄を忍の一字で耐え抜こうとしているよう。

このシチュエーションにこの男性、
写真家の眼の確かさを証明する傑作でした。

すぐれた写真家の作品展を拝見しますと、
いつも感じられるのは、作品の背後に存在する作家の人物の大きさ。

25年以上前のことです。

私の師匠、田島謹之助さんは静かにこうおっしゃったことがあります、

  「※※さん、よい写真を撮りたかったら、
   りっぱな人間にならなければいけませんよ」

それまで、そんなことを考えたことがなかった私は意表を突かれました。
そのときも、ほとんど理解できなかったと思います。
今でもまだ理解できていないかも知れません。
立派な人間にどうしたらなれるか?
見当もつかないからです。

  できることは日々がんばること、これだけ。
  まっとうに、まっしょうじきに、真剣に生きること、
  人にこびず、自分の信じていることだけで生きること、
  これだけでしょうか?

おかげで、まさに庶民のまま、人生を過ごしてきました。
では、それが写真になにか影響を与えているか?
とくに、「よい写真」を撮れるようになったか?
こんな風に真っ正面から問いかけられると、つらいですね。

まず、自分にとって「よい写真」がなにか、なんて、
一切考えないようになってしまったからです。

人が賞賛するような傑作写真がよい写真であるとすれば、
そんなものを撮ろうとすることは、とっくの昔にやめました。
人柄、人間性がにじみ出るような、地味溢れる写真であるとすれば、
あまり人柄、人間性がにじみ出てもらっても困ります。

そんな理知的な考慮を超えて、なにかが生まれる、
そこまで行かないと、写真のことは分からない。
そんな感じがします。

  どうやら人生まだまだ、というところでしょうか?




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     [後書き]
        タンバールは、露出をオーバーに設定しないと、
        妙味が発揮できないようです。
        ところが、私は徹頭徹尾、露出をマイナスに補正する人間。
        使いにくいですねえ。
by Hologon158 | 2012-11-05 12:16 | ホロゴン外傳 | Comments(0)