550.07 ホロゴン外傳137「2014年10月3日 壺坂の城下町は人形で溢れていた」7 レンズ草
面白い出来事がありました。
かつては銀塩フィルム写真の名人にして、
現在はデジタルカメラ名人のNKさんのブログで、
ザクロの見事な写真を拝見しました。
奈良まち秋色 2014-10-08 19:06
(http://k7003.exblog.jp/)
ザクロを食べたことがありますか?
私は子供の頃時々食べました。
ざくっとほおばると、口の中に何とも言えない刺激が広がって、
おいしいようなおいしくないような変幻自在の味。
NKさんの作品は、赤をキーカラーにした3枚組。
そのザクロはかなり鮮烈なまでに明るい真紅でした。
見ただけで、口の中が甘酸っぱくなる感じ。
でも、ご本人はそのカラーに満足していないとのお言葉でした。
私は感じたことは即座に書いてしまう、失言名人。
ついこうコメントしてしまいました、
「確かに、ザクロの赤ってもう少し墨っぽい感じですね。」
昨日再訪してみると、NKさんのお答えが待っていました。
まさにザクロそのものと言いたくなるような色感の画像に入れ替えられたのです。
名人にかかると、RAW現像って凄い効果を発揮する実例を初めて見ました。
ご承知かどうか知りませんが、私はRAW現像をしたことがありません。
どうやってするかも知りません。
たった1度だけ試したことがありますが、結局付属のJPEGだけ使いました。
JPEGでしか撮ったことがありません。
吉田正さんも講義でいつもおっしゃっています、
「必ずRAWで撮ること、
あとで自分の望むとおりの画像に調整できるから」
凄い時代が到来したものです。
でも、私の写真への期待、望みはその逆なのです。
撮ったまま、ただそれだけの写真を見たい。
12年間3600本のモノクロームを現像、引き伸ばししました。
そのポリシーも、フィルムに写っているままの画像にすること。
カラーになっても、その方針は変わりません。
もちろんRAW現像は私の方針と違うわけではありません。
すべてデータの中に入っているものをきちんと引き出す方式なのですから。
でも、私は、面倒なことが嫌い。
レンズで夢を見たいだけ。
レンズがくれるものをそのまま画像にして、驚愕したい、
あの薄汚れた片隅をこんなにも面白い画像にしてくれたのか?
ありがとう!
だから、ブログに掲載する私の写真はすべてそのままか、
もしくは濃度を私の標準に調整しただけ。
その際、NKさんのように、リアリティのある色調を実現するつもりはありません。
現実と写真とがまったく異質な色調になっても平気です。
というより、メタモルフォーゼと称して、異変を期待するのが私の好み。
クラシックレンズは、簡単に言いますと、
リアリティ再現という点では欠点としか言いようのない偏りが持ち味。
だから、全部色調も再現性もバラバラで、コントロール不能。
そんな写真が私の記憶をバラ色に染めてくれるのです。
私の写真がどこかおかしいのも当然です。
全部、いわばレンズが生んだ「幻想」「幻惑」「まやかし」なのですから。
JPEGが写真の修正の可能性を極端に制限しているとすれば、
それこそ、私の期待するところというわけです。
私とNKさんとの間には天と地ほどの差があるわけです。
天のNKさんはアート的な再現性を理想とされるのに対して、
地の私はレンズの癖による現実の変容を楽しみたいだけ。
かくして忠実な再現性を目標として果てしなく変化するデジタル世界は、
NKさんにとっては夢の環境であり、
私にとっては悪夢の環境、余計なお世話だ、というわけ。
歴史はどんどんと進んでいくのに、
私はますます置いてけぼりになるばかり。
やはり野に置けレンズ草。
by hologon158
| 2014-10-10 11:52
| ホロゴン外傳
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