558.22 ホロゴン外傳139「2013年11月23日 昨年、ぼくは京都で楽しく撮っていた」22 定番3羽ガラス
木曜日も至福の日でした。
前回書いた10穴ホールズに続いて、
先頃相次いでオークションサイトで落札したものたちが続々到着したのです。
ハーモニカが3本とレンズが1本。
レンズのことは取っておきということで、
次回に書くことにして、
今回は近頃最愛のクロマチックハーモニカに集中しましょう。
ハーモニカ制作会社の世界最高峰ホーナーの定番3羽ガラス。
① Cromonica260
② SuperCromonica270
③ SuperCromonica280
一番楽しみにしていたのがCromonica260。
1926年製なのですから、なんと88歳!
もうボロボロなんだろうと覚悟していたのですが、
案外と美品です。
カバーはまだシルバーに輝いています。
このハーモニカのアクセントは一目瞭然。
半音レバーのバネが外にむきだしについています。
このバネのフォームが流線型ので、クラシックなのです。
でも、レバーはスムーズに動きません。
それもそのはず、
レバーによってスライドする板が錆か塵で汚れに汚れているのです。
しかも、カバーの背面を開口部からのぞくと、
リード、バルブがむき出しに見えるのですが、
各音のバルブ(不要なリードが鳴らないようにする空気遮断用の弁)は、
本来なら空気が通る穴の上に白覆面でぴたりと張り付いているのに、
「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ホイホイ」とばかりに、
テンデンバラバラに跳ね上がってしまっています。
全面的なオーバーホール、修理と清掃、研磨を必要とするようです。
もともと①はいわば鑑賞用に購入したクラシックですが、
②と③は2,30年以上前のクラシックとは言え、
まだ演奏に使えるはずと見込んで入手したものです。
まさにビンテージものと言えるクラシカルなたたずまいですが、
リード、バルブを新しく張り替えて、
オーバーホール済みという触れ込みなので、手に入れました。
外観は経年変化による古めかしさ、傷はありますが、
その分、ちょっと大げさに言いますと、
「いぶし銀のような重厚な輝き」があって、
いかにもビンテージらしい荘重な雰囲気が気に入りました。
レバーはかなり重いのですが、これはバネがまだへたっていない証拠。
要するに、出荷時のデフォールトの状態がまだ保存されている感じ。
2本とも丁寧に消毒し、清掃し、研きたて、順番に吹いてみました。
まず②の270。
なんと言うことでしょう!
15年ほど前の先着の中古270は、
火曜日に辻晋哉先生にごらん頂き、整備もしていただき、
「現代のものよりずっとよい音がします」と太鼓判を押していただきました。
その270の半音レバーの頭は現代とまったく同じ形の金属。
新着の270はレバーの頭が木製なのです。
他のデザインは新旧すべて普遍のロココ調の骨董品風のケルト文様。
260、280はもっとシンプルな、かなり現代的デザインなのですから、
ホーナー社は270をフラッグシップモデルと位置づけていたのでしょうか?
さて、その新着270の音はどうだったか?
音がさらに大きく輝き、どこかしっかりとした芯がある感じ。
腰の据わったサウンドです。
これは使えそう!
最後の③の280はどうだったか?
16穴4オクターブのいわばプロ仕様。
これも驚き。
②の270ほどの輝かしさはありませんが、
とにかく低音から最高音まで楽々と出せて、
その音質がかなり均質なのです。
たとえば、おなじホーナー社の現代のハイレベルのモデルである、
Super64-Xは最初のオクターブでは深々とした、
ハーモニカとは思えない、サックスのような重低音を聞かせるかと思うと、
第4オクターブでは、
ソプラノサックスのような華麗な高音をきらびやかに聞かせてくれます。
これはとてもおもしろい効果を出してくれるのですが、
たとえば、ジャズハーモニカの大御所トゥーツ・シールマンスだったら、
使わないだろうな、という感じ。
トゥーツの至高のハーモニカはYouTubeで数知れず楽しめますが、
最低音から最高音まで均質で、
ぐっと引き締まったサウンドこそトゥーツの真骨頂であり、
ホーナー社も上記3セットをそんな理想の下に製作してきた感じがするからです。
どうやら彼は270と280をベースとするものを使っていたようです。
聞けば聞くほどに、この人はハーモニカの神様のようだなあという気がしてきました。
このあたりでも、私のクラシック志向が頭をもたげてくるのですからおかしなものです。
彼を聞けば聞くほど、現代の重厚華麗、絢爛豪華なサウンド、アドリブが、
デジタルレンズの超高画質にどこか通じるものがあるという気がしてきました。
猛烈にすごいんだけど、こころにジンと迫るひめやかな情感はどこにもない。
トゥーツがギターを弾きながら、ハーモニカでジャズを歌いあげるビデオを観ました。
自分のギターを伴奏に、口笛だけでクライマックスを作り上げるのですから、
大変な音楽家です。
偉大なハーモニカ演奏家の多くが、
クラシック音楽教育を下地とする人たちであることはかなり示唆的です。
クラシック音楽の真骨頂はコントロールにあります。
抑制、節度、ハーモニーがかえって音楽の強さを増し、感動を高めます。
どうやら、ホーナー社の上記3機種はそんなコントロールにきわめて適した楽器、
そんな感じがしてきました。
最初の270と今回の3本のオリジナルマウスピースは、
四角い穴をぎりぎり一杯に切った土手が鋭角的に急坂となっているようで、
唇に当たる感触はだんだんと鋭さを増す感じ。
マウスピースは最新のものに取り替えます。
by hologon158
| 2014-12-03 00:55
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