607.04 ホロゴントラベル28「2016年3月7日ホロゴン15㎜F8Mで三重の旅千秋楽に」4 ダイアモンドを粉々に
私の親しい友人が至福の楽器演奏を表した言葉を忘れることができません。
「ダイアモンドを粉々に砕き、
さらに、その粉の一粒一粒をすりつぶした様なパウダー状の音」
「空気雑音が魅力になる音」
いったいどんな音なのでしょう?
誰がそんな音を出すんだろう、という見当はつきます。
偉大な演奏家たち。
他の誰にも出せないようなサウンドで音楽を創った人たち。
リコーダーのフランス・ブリュッヘンを思い出します。
コンサートホールで、マイクなしで、リコーダーを演奏するのです。
楽器としてはかなり小さな音。
でも、ブリュッヘンのサウンドはホールを貫きました。
どうしてこんなサウンドが出るんだろう?
不思議でした。
その後に幾人も優れたリコーダー奏者のコンサートの機会がありました。
ブリュッヘンのような、腹の底に響いてくる、
そんなサウンドは聴くことはできませんでした。
今から思うと、ブリュッヘンのリコーダーが
スペシャルだった理由が分かるような気がします。
ブリュッヘンは第二次世界大戦中、ドイツ軍の占領下にあって、
占領軍に見つからないように、
一番ちいさな音の楽器としてリコーダーを選んだのだそうです。
おそらく建物の外、どころか、自宅の壁の外には一切聞こえないように、
極力ピアニッシモで練習したに違いありません。
密告のおそれだってあったでしょうから。
私には分かりませんが、一応頭で考えてみますと、
ピアニッシモで音楽を正しく演奏するためには、
腹筋をはじめとする全身を極力コントロールする必要があるに違いありません。
そんな練習を幾年も続けたリュッヘンが戦後リコーダー演奏家として、
コンサートホールに出演したとき、彼の心と体は、
あらゆる制約、束縛、枷をバリバリと打ち破った解放感にあふれたのでは?
でも、彼の心と体は完全にコントロールされています。
その完全にコントロールされたフォルテは、並のフォルテではなかった!
イギリスのシェークスピア俳優たちのせりふを思い出します。
小声でつぶやいても劇場の隅々まで聞こえる。
いざ大音一声を放つ、劇場がどよもすように響きわたりました。
叫んでいるのではないのです。
コントロールされたままフォルテにクレッシェンドするのです。
日本の映画俳優たちのうちで、新劇出身の俳優たちが、
ハリウッドの映画俳優たちのうちで、イギリスのシェークスピア俳優たちが、
それぞれ重きを成したのも当然です。
腰の据わらない、金切り声ののど声では、
腹の中からほとばしる声には太刀打ちできなかったからです。
冒頭のサウンドって、そんな完全にコントロールされ、
ぎゅっと凝縮されたサウンドなのではないでしょうか?
じゃ、私も揚琴やリコーダーやハーモニカを練習するとき、
同じようにピアニッシモサウンドの練習をすべきではないか?
そんな感じがしてきました。
by hologon158
| 2015-07-18 11:47
| ホロゴントラベル
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