わが友ホロゴン・わが夢タンバール

609.04 ホロゴンデイ132「2015年5月30日ホロゴンは鶴橋でよそ行きの顔?」4 「書斎の宇宙」


高橋輝次編「書斎の宇宙 文学者の愛した机と文具たち」(ちくま文庫)
この本を読んでいました。
途中でやめました。
なぜか?

私はこんな期待を抱いていたのです。
文学者たちが、文学創造にあたり、
書斎のさまざまなものたちが思いがけない貢献や、
インスピレーションを与えてくれたお話。
書斎のさまざまなものたちの思いがけなく深い魅力を、
それぞれ独特の筆致と含蓄で語る文章。
こんな人生を楽しくさせてくれるお話に出会えるんじゃないかな?

そんなもの、なんにもありませんでした。
なんのことはない、ありきたりの文体で、
こまごまとした雑感をただ淡々と書き記した文章ばかり。
江戸っ子じゃありませんが、言いたくなりますね、
おめえさんたち、なんでえ、
文章のトーシローじゃねえのかい?
原稿用紙を字で埋めてるだけじゃねえのかい?

私の甥は子供の頃からとても優秀な頭脳も持ち主でしたが、
小学校3年生の頃でしたか、作文の時間に、
原稿用紙の枡目全部を小さな恐竜の走る姿で埋めて、
先生からこっぴどく叱られたことがありました。
ろくなことが書けないのから、こちらの方が気が利いている、
そう考えたのでしょう。
こちらの方がずっと読み応えがあります。
とにかく笑えるのですから。
駄文じゃ、笑いもできませんよ。

ポール・ギャリコは若い頃、
ニューヨークのスポーツ紙記者でしたが、
スポーツマンたちのエピソードを紹介するコラム欄で、
文筆の才能を開花させました。
その一部が翻訳されています。
『ゴールデン・ピープル』常盤新平訳.王国社,1987
ぜひ読んで見てください。
Audible.comで、原作の朗読も聞けます。
Farewell to Sport
Written by: Paul Gallico

一文一文すべてに、非凡なスポーツマンたちの非凡な生き様が、
生彩溢れる非凡な筆致で描き出されます。
もしかすると、ギャリコは非凡なスポーツマンたちと出会うことで、
人間としての視野を途方もなく巨大に拡大できたのかも知れません。
彼の文学作品は次第に忘れ去られようとしています。
純文学と大衆文学の狭間にどっちつかずに漂ってしまったのかも?
でも、まだかなりの本が翻訳で読めます。
どの本を読んでも、心があたたかくなります。
そんな小説家って、あまり居ない。

ウィキペディアに面白い言葉が収録されています。
引用させていただきましょう。

ギャリコはかつて、ニューヨーク・マガジンに語ったことがある。
「私は、薄汚い物書きさ。どうみても、作家って柄じゃない。
私は物語を語るのが好きなだけで、
私の書いた本はみんなお話を語っているだけだよ。....
もし私が2,000年前に生きてたとしたら、
洞窟住居を渡り歩いて、言うんだろうな。
『やあ、入っていいか?腹が減っているんだ。
食べるものをくれよ。そしたら、代わりに面白い話をしてやるよ。
昔々、二匹の猿がいたとさ』といった具合で、
彼らに洞窟に住んでた2人のひとの話をしてやるのさ。」

これはいかにもギャリコらしい言葉。
このような肩肘を張らない語り口で、
いつも読者になにかを考えさせてくれます。
「書斎の宇宙」の文学者たちと来たら、
肩肘張った語り口で、読者の貴重な時間を無駄にさせるだけ。
880円無駄にした私としては、
声を大にしてこう言いたい!

ひょんなことで出会った机を手に入れて、
その机で書き出した途端に、
仰天するほどの豊かな想像力が湧いてきたお話。
一本の古びた萬年筆に出会って、
その萬年筆がよく走る特殊な原稿用紙を手に入れた途端に、
畢生の大作がまるで自動筆記のようにほとばしり出たお話、
そんな文学者と文房具の幸せで奇跡的な出会いのエピソード、
そんなものがあってもいいんじゃないの?

そろいも揃って、そんな凡庸な語り口で
よくもまあ文学者だなんて......?
書斎の宇宙?
ご冗談を。
書斎の五里霧中でしょう。




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by hologon158 | 2015-08-06 23:09 | ホロゴンデイ | Comments(0)