わが友ホロゴン・わが夢タンバール

632.06 ホロゴン外傳159「2016年1月30日超ベス単が加美で華開いた」6-完-写真家吉田正


2月18日吉田正さんの写真教室で、
友人の画家平野遊さんの水彩画展「川向こうの街」の紹介を受けました。
3月3日から15日まで、奈良県葛城市当麻寺側の古民家ギャラリー。

吉田正さん、この画家の一番大好きな画家が
アメリカの画家エドワード・ホッパーだと話され、
幾枚か代表作を画面に投影されました。

彼の代表作は『ナイトホークス』(Nighthawks)
グーグル画像検索すれば、筆頭でご覧になれます。
私も大好きな作品です。
私は、勝手にこう読んでいます。

車も走らず、人通りもほとんどなくなって、
深夜を超えた頃でしょうか?
中央のカップルはもちろん恋人同士ですが、
なぜか、二人の間に隙間があります。
男性が女性に別れ話をおずおずと切り出した瞬間なのです。
女性は凍り付いています。

バーテンはグラスを洗っていたのですが、
男性の言葉に小耳にはさんで、
思わず「おっ」と顔を向けてしまっています。

美しい女性がよく見える位置に座った紳士も、
うつむて素知らぬ風情ですが、興味津々で耳をそばだてている。
紳士は、思わず顔を向けるようなことはしないのです。

男たちはハットをかぶったままです。
カップルの男は長居するつもりがないから、
もう一人の男性もちょっと一杯のつもりだったから、
そんなシチュエーションが私の推測を裏付けている、
そう考えてもよさそうです。

「平野さんはこのホッパーにかなり似た絵を描かれます」
もちろんホッパーは私の大のお気に入りです。
以前も何回か書きました。
でも、その絵を投影画面で見ていて、ふと気づきました、
「吉田さんのニューオーリンズ時代の写真も、
かなりホッパーを思わせますね」
吉田さん、苦笑して、
「実はずいぶん以前にも人にそう言われたことがあります」

アメリカの風土、文化の中で生まれる人間関係の空隙、孤独を
徹底的に描いた画家です。
そんな孤独の淵によろめきながら、からくも踏みとどまろうとする、
多くは女性たちの魂の切実なあえぎが聞こえてきます。
息苦しくなるほどに、濃密な絶望と切望のあえぎに満ちています。

文明が発達するにつれて、人間が都会でひしめきあえばあうほど、
人間関係は希薄となり、一人一人の人間は孤独の狭間に滑り落ちて、
逃れるすべを見失ってしまう。
公共の現代建築の設計理念は大衆処理を第一に置く傾向にあります。
大衆は水のように「流れ」として処理されてしまいます。
それであればあるほど、
一人一人の人間の心も感情も置き去りにされます。
でも、一人一人の人間はちゃんと心を持ち、
大衆として処理されることに多かれ少なかれ抵抗を感じます。
人間は自分の放り込まれた環境が自分をやさしく包んでくれないことに、
意識するにせよしないにせよ、違和感、疎外感を感じています。
自分の周辺の人間も、心を持った存在ではなくて、ただの環境と化した。
これが現代の人間環境というわけです。

こんな現代的傾向が進むにつれて、
偉大なアーチストの基本的なコンセプトは孤独、疎外となりつつあります。
アンドリュー・ワイエスとその周辺の人々にはまだ自然環境がありました。
だから、彼の絵からは、疎外よりも同化が色濃く漂ってきます。
どうやら都会がニッチだったホッパーにとって、
自然環境は避暑地的な意味合いを超えなかった感じがします。
自分のニッチにはなりえず、逃げ場にもならない。
だから、彼も彼の絵の人物たちも、
都会の孤独と真っ向から向かい合うより仕方がなかったのです。

吉田さんの写真世界は違います。
ホッパーと基底においては共通する都会であり、
イメージ的にはホッパーと共通するところがありますが、
よく考えてみますと、そうではあっても、
基調はあくまでも人間性の回復への強い志向にあります。
逃げ場のない孤独とどうしようもなく向き合う人間の姿ではなく、
孤独の中からなんとかして人間的な触れ合いをつかみとろうとする
強い意志が浮かび上がってきます。
だから、たとえ人間の姿がないシーンにさえも、
人間を感じさせられてくれます。

この流れは年々さらに太くなっていく感じがします。
人生をどこまでも肯定しようという意志が
ますます強くなっていかれるようです。
人よりも遥かに困難で苦しい人生を生き抜くことで、
ますます強靭な精神を育てつつ、写真にそれを反映させている、
これが吉田正さんの写真世界に力動感を与えています。

ホッパーの画集を繰っていると、だんだん息苦しくなってしまいます。
でも、吉田正さんの写真集のどれを繰っていても、
だんだんと元気が出てくるのは当然なのでしょう。
カルティエ=ブレッソンがそうでしたが、
吉田正さんほどに、写真に作家の人間、心がしっかりと
刻みこまれている写真はほとんど見ることができません。
私が私淑するもう一人の写真家の林孝弘さん位でしょう。

私は三人の写真を拝見する度にこう感じるのです、
「見ていると、笑いがこみ上げてくるな」
私にそう言わせる写真をもっともっと見たいものです。




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by hologon158 | 2016-02-23 11:59 | ホロゴン外傳 | Comments(0)