わが友ホロゴン・わが夢タンバール

643.03 ホロゴントラベル33「2016年4月2日大曲トリップをホロゴン満喫」3 詩ありき



吉田正さんの写真教室のメンバーである、
詩人の尾崎まことさんの詩や文章を読ませて頂いて、
つくづく思うことがあります。
詩って、私にはとても説明できないレベルで起きている
何かのようです。
だから、論文でも仕様書でも報告でもない。
常人が書く文章にはない響きとか膨らみとか余韻を伴って、
言葉が歌っています。
でも、音楽ではない。

総合詩誌「PO」160号に、尾崎さんの詩論が掲載されています。

「言葉の果つるところに詩ありき」
一行詩として読む尾崎放哉

この一言だけで、もう脱帽です。
私は詩が分かりません。
この言葉一つで、
私がなんで分からなかったかが、了解できました。
私はどこまでも詩を言葉として捉えてきました。
いつも理解しよう、意味を知ろう、
こればっかり考えていました。
詩は論説とか手引き書であるかのように、
どこまでも論理的な意味を探そうとしていたようです。
動物園で青い鳥を探そうとするようなものですね。

尾崎さんは「言葉の果つるところ」を、
ちゃんと言葉で説明してくれています。
「言葉の機能をぎりぎりまで拡張した結果の
臨界的な場所のことでもある」
なぜ、そこまで突き詰められなければならないのか?
尾崎さんはちゃんとその理由を説明しておられます。
「理想として、ある一行が詩であるためには、
他の行に頼らず、自らの一行で一行を支えなければならない」
私に理解できるようなものではありません。
でも、一つ思うのは、
詩人って、アーチストの顔をした哲人じゃないかな?
哲学者もやっぱり言葉の果てを超えたあたりを
探ろうとしているのですから。

尾崎さんが採り上げた詩人は、
尾崎放哉
この人の年譜を拝見しますと、
前半生はエリートコースを歩きながら、
後半生は、なぜか寺男として転々して、
傍目には転落の人生を送った方のようです。

このような方に稀に出会いますが、
この放哉もそうですが、
いつも怪しむことがあります。
本当に転落だったんだろうか?
そうじゃなくて、自分に正直で、
世の中が私たちを縛り付ける規矩、枷をぶち破って、
本来の自分として生きる勇気があった人なんじゃないかな、
ということです。

一行詩を書くようになったことにも、
同じ勇気が働いているのではないでしょうか?
尾崎さんが引用されている詩をちょっとごらんください。

    一日物云はず蝶の影さす

    墓のうらにまわる

    てふてふが一匹ダッタン海峡を渡って行った

    咳をしても一人

    鴉鳴いてわたしも一人

不思議ですね。
たった一行の言葉がポツンと宙に浮いている。
それなのに、と言うより、それだからこそから知れません、
さまざまなイメージが湧いてくる感じがあります。

まだ学生の頃、西大寺を訪れたときのことを思い出しました。
寺男(なんだか、放哉のようですね)が私を呼び止めて、
仏像の間に置かれた小さな鐘を指さして、
こんなことを教えてくれました、
「あの鐘の小さな音に耳を澄ませたことがあるかね?」
「ありません」
「一度、音が鳴りやむまでじっと耳を澄ませてごらん。
あんたの心の中の澱が少しずつ落ちていく、
そんな感じを味わえるよ。
さあ、目をしっかり閉じたままにしておくんだよ」
そして、静かに一音を響かせました。
その音が消えるまでの長かったこと。
いつまでもいつまでも、かすかにかすかに響きが残りました。
私の心の澱が落ちていったかは分かりません。
でも、なんだか宇宙の中に私が一人居て、
宇宙の音も鐘の響き一つ、
そんな異様なほどに澄み切った体験を味わえたような思いでした。
自分の家で試してみましたが、
もっと早く音は減衰して消えてしまいました。
西大寺の本堂のような大きな空間でこそ可能な体験なのでしょう。
一行詩って、もしかすると、
西大寺の鐘のような現象なのかも知れません。

尾崎さんはこんな印象的な言葉を記しておられます、

「こんにちでは現代詩にも見られることだが、
短歌や俳句の世界には特殊な言語空間を構築して
そのなかで自己の位置を高くしようとする、
いわば第二の世俗的な欲望がある。
それ自身に誤りがあるわけではないが、
一行を支えるのはその一行と己のパワーだけだという
詩の志の高さを忘れる恐れがある」

この最後の言葉にぐっと来ました。
と言っても、いつもの我田引水式連想ですが。
「ロボグラフィ写真を支えるのは、
その写真そのものと私のパワーだけ」





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by hologon158 | 2016-05-01 23:07 | ホロゴントラベル | Comments(0)