わが友ホロゴン・わが夢タンバール

643.04 ホロゴントラベル33「2016年4月2日大曲トリップをホロゴン満喫」4 本を書くのなら



NHKカルチャーラジオの台本なのでしょうか、
「文学の世界 中国古典のスターたち」(加藤徹)
楽しく読みました。

著者の言葉で、「中国のスター的なキャラクター」たち。
三蔵法師、関羽、杜子春、西施、虞美人、武松、
白素貞、穆桂栄、紅娘、包公、孔子。
面白く読ませていただきました。

でも、ちょっと残念。
これらの人物たちが人気者となった魅力がどこにあるか、
それがちっとも語られていない。
周辺知識と言ったら語弊がありますが、
すぐ忘れても良いような情報ばかりが語られている感じ。

思うに、著者が彼らを「キャラクター」と捉えたことに
どうやら遠因があるような感じがします。
私たちの心の中に食い込んできて、忘れようもない存在となる、
そんな生き生きとした姿を描き出そうとせずに、
なんだかただの知識、情報を大衆に提供する、
悪く言えば「オタク情報」を提供する姿勢ゆえにそうなった、
という感じがします。

つまり、著者は彼らを愛していない。
学者として、冷静に付き合っているだけ、そんな感じ。

たとえば、三蔵法師。
現実の三蔵も、「西遊記」の三蔵も、
それぞれに際だった個性的振る舞いをします。
それが歴史的役割を超えた人間的魅力を感じさせるからこそ、
スペシャルなのです。
でも、どんな人だったか、まるで語られていません。

関羽と来たら、「三国志演義」にも正史「三国志」にも、
魅力的なエピソードが満載されています。
その一つ、たとえば、
奸雄董卓の部将華雄を討ち取って、首を持ち帰ったシーンとか、
毒矢で膿んだ肘の骨を、碁だったか将棋だったか楽しみながら、
名医にガリガリと削ってもらうシーンとか、
関羽の人となりをずばり教えてくれるエピソードが欲しかった。

「水滸伝」の英雄の一人、武松もそうですね。
「性格が分類した英雄」という定義に沿って、
武松の人となりをるる説明して下さるのですが、
でも、それなのに、彼が私たちを魅了する理由が見あたりません。

主題となった人たちが時を超えて中国人を魅了してきたのは、
なぜだったのか?
この肝心のポイントをぐいと押し出さなきゃ。

名料理人がさらりと手際よく仕上げた一皿をすっと押し出して、
「食べてみな」と言うようなものです。
一口食べて、なにも言えない。
ただ、こくりと頷くだけで、黙々と口に運び、
ほんのりと幸せの微笑みを浮かべる。
私はグルメじゃないんだけど、そんなシーンなら想像できます。
なんでも、これでなきゃ。

たとえば、私にとって一番卑近な写真でもそうです。
「これ、なに撮ったの?」A
こう言われてると、アウトですね。
「なんで、こんなもの撮るの?」B
こう来ると、さらに絶望的ですね。
見ている人はその写真になんにも感じていないのです。
つまり、感じる前につまずかされてしまっている。

私の写真は実はその典型例ですね。
Aは明らかですが、Bはほとんど誰にも分からないようです。
私の写真は全部そうです。
私のような感じ方をするほんの数人にしか通じないようです。
でも、これは私が表現という行為を捨てているから。

もしあなたが表現行為として写真を志すのであれば、
これはまずいですね。
あなたが魅力的だと夢中になったシーンを、
あなたが感じたままに人も感じてくれるように撮る、
それが写真の初期条件、第一歩ですね。
このどちらかが欠けると、意味不明となります。

ほとんどの写真がそうです。
全然夢中になっていない。
「とりあえず撮っておこうか」的写真がほとんど。
自分の心が躍っていないのに、
人の心を躍らせることができますか?

加藤先生も将来この放送原稿から発展して、
一冊をものにすることがあったら、
「スター」とか「キャラクター」として扱うのではなく、
虚実にかかわらず、それぞれの時代、社会の中で
精一杯生きた生身の人間としての魅力を、
まず自分がしっかりと感じ取って、
読者たちに自分の感じたままをしっかりと伝えて、
読者の心の中に彼らがいつまでもとどまり、
必要なときに心の底から躍り出て来て、
生きる力を与えてくれる、そんな本を書いてくださいね。

私はそんな風に生きてきました。
愛読書たちも、その書物の中で生きた人間たちも、
さまざまなジャンルで私が出会った正真正銘のアートたちも、
音楽も、映画やドラマも、そしてその登場人物たちも、
みんな私に必要なときに記憶の底から浮かび上がってきて、
私に勇気と知恵を与えてくれる、そんな私の財産。

私にとって、その一例が関羽。
自分の主であり、義兄である劉備が、
大敗を喫して敗走したまま生死不明となって、
劉備の妻子とともに、宿敵曹操の虜となった関羽は、
ここで人生の選択をします。
礼を尽くして招く曹操に仕えるという道を拒んで、
あくまでも生死不明の劉備に仕え続けるという道。
人間としての信義誠実の道を躊躇なく選択したのです。
私も、幾度か人生の選択に迫られまいたが、そんなとき、
関羽の姿、彼の選択は私の一つの模範、規範となりました。

狭くて、冴えない道なんだけど、後悔しなくて済む道。
財産も地位も名誉も伴わないけど、
地についた人生を心安らかに歩める道。
後悔していません。





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by hologon158 | 2016-05-02 13:36 | ホロゴントラベル | Comments(0)