わが友ホロゴン・わが夢タンバール

675.01 ホロゴン外傳191「2016年12月20日エルマリート28mmの奈良町」1 チョン・キョンファ


ホロゴンをフィーチャーしたホロゴンデイはひとまずお休み。
エルマリート28mmf2.8で撮った奈良町をごらん頂きましょう。
437枚撮って、その半数少しを7回シリーズの予定。
でも、その前に昨夜の、私にとって大きな出来事の報告。

1月25日水曜日、
生涯で何度あるか?
と、真剣に数えたくなるような体験をしました。

ザ・シンフォニー・ホールでの、
チョン・キョンファさんのコンサート。
バッハの無伴奏ヴァイオリン全曲。

一昨年でしたか?
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタのコンサートは、
今から思い返しますと、不調だったようです。
CDやYouTubeでの、炎のような演奏とはかなり違った穏やかな演奏に、
ああ、全盛期は過ぎたんだろうなあ、と慨嘆していたのです。
午後7時の定刻をほとんど遅れることもなく、ヴァイオリニストは、
おそらく韓国の織物を使った軽やかなドレスに身を包んで現れました。
前回よりも不敵な笑い。
後で考えると、「まあ、見ていなさい」という自信の笑みだったようです。

2回の休憩を挟んで全6曲、もう完全にパラダイスでした。
独奏ヴァイオリンを聴くには最上の席ではありませんでした。
B28,29。
中央に12席の列があり、私たちの席は、通路を挟んだ右側の列の3、4番目。
ピアノ伴奏があるときは、ヴァイオリニストはピアノの左よりに立ち、
ちょっとピアノ側に体を振ります。
だから、ヴァイオリンの音は中央と右側の客席に向かって放射します。
ところが、無伴奏だと、ヴァイオリニストは正面に向きますので、
勢いヴァイオリンは逆方向にちょっと向き合うことになります。
でも、チョン・キョンファさんは私たちと7、8mしか離れていない。

これまでも生涯に、来日した大ヴァイオリニストはかなり聴きました。
ミルシテイン、イツァーク・パールマン、スーク、
そして、近頃は千住真理子さんや諏訪内晶子さん。
すばらしい音楽、すばらしいヴァイオリンでした。
でも、チョン・キョンファさんにはぶっ飛ばされた感じ。
こんなにダイナミックで、強烈で、さまざまにカラー、温度が変わり、
こんなに雄弁に歌うなんて、想像もしたことがなかったほど。
しかも、3時間弱のコンサートを疲れなどちらりとも見せず。

おもしろかったことは、コンサートばかりではなく、
大演奏家たちが演奏しているレコード、CDをかなり持っていて、
どなたの演奏を聴いても、いつもバッハ。
でも、チョン・キョンファさんの演奏はかなり異色。
ええっ、ほんとにバッハはこの音楽を書いたの?
こんなに心に食い込んでくるダイナミックでパセティックな音楽を?
本気でそう仰天するほどに、独創的な無伴奏でした。

バッハの無伴奏ヴァイオリンの色はかなり制限されている、
そう考えてきたのですが、
チョン・キョンファさんの無伴奏は、
音のヴァリエーションとダイナミクスが他の演奏の何倍もあるという感じ。
野太く底力のある伸びやかな中音と来たら、
これまで誰からも聴いたことがなかったほど。

チョン・キョンファさんはグァルネリをお使いだそうです。
でも、千住さんや諏訪内さんの名器中の名器と言われるストラディヴァリが
戦国姫君ほどに勇壮強靱に響くとしたら、
チャン・キョンファさんのサウンドは、
そんな姫君をお嬢さんだなあと思わせるほどに豪快、壮絶、
まさに古の項羽や、万夫不当と歌われた関羽、張飛クラス。
つまり、楽器だけじゃない、人間の強さが違う、
そんな感じを強く受けました。

6曲目の直前に、私たちの左側のお二人が退場。
すでに午後10時近い。
最後まで聴くと、終電に間に合わないほど遠くからお越しなのでしょう。
私たちは喜んで左に移動。
通路を前にする座席なので、前ががらりと開け、
チョン・キョンファさんとまともに向かい合っている感じ。
しかも、たった1m左に寄るだけで、サウンドが格段に充実しました。
ああ、中央列4列あたり以降の数列のお客さんにはどんな音が届いているんだろう?
知りたくないですね。

演奏が終わった後の客席の熱狂ぶりはかなりのものでした。
私まで生まれて始めてスタンディングオベーションに加わったほど。
でも、チョン・キョンファさん、たった一回、舞台に戻っただけで、
袖のドアは閉じられました。
そのドアはほとんどの人には見えないのですが、
さっとほとんどの人が立ち上がりました。
アンコールを求める気持ちなど、誰にも湧かなかったのです。
蛇足、邪魔、ぶちこわしになりかねません。

かなり以前、同じシンフォニーホールで、
ヨー・ヨー・マのバッハ無伴奏チェロ全曲公演を楽しみました。
彼は、ポピュラーな曲をアンコールで弾き続けたようです。
観客はバッハのときのおざなりな拍手と打って変わって、
彼がアンコールの態勢に入った途端に、
「キャー!」、
演奏が終わると、
「ブラボー!  ブラボー!  」

私たちは1曲目で席を立ちました。
ヨー・ヨー・マはバッハで全力を使いきっていない!
観客は、バッハを聴きにきたんじゃなくて、
ヨー・ヨー・マを見に来たファンたちだった。
彼はこの観客たちに迎合している。
これじゃ、アーチストじゃない、タレントじゃないか!
あほらし!

私の二胡の先生RJ先生はきっぱり、
「ヨー・ヨー・マは本物じゃないよ。
両手の使い方がなってない。
本物のチェリストはロストロポーヴィチ!」
YouTubeでご覧になったら、一目瞭然ですよ。
ロストロポーヴィチのチェロは腹の底に響きます。
ヨー・ヨー・マは響きませんね。
そして、チョン・キョンファさんのヴァイオリンも腹の底に響きます。
夫婦で帰りの電車で語り合いました。
「一生忘れられない演奏だったね!」




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by hologon158 | 2017-01-26 22:43 | ホロゴン外傳 | Comments(0)