わが友ホロゴン・わが夢タンバール

699.7 ホロゴン外傅206「2017年6月11日東吉野榛原ビオゴン21㎜F4.5デイ」7 図書館から


喫茶店を出て、奈良町を撮影しつつ、
県立図書館に向かいました。
図書館では、朗読CDを5セット返却し、
また、朗読CD5セットを借りました。
次第に朗読CDのストックも終わりに近づき
(と言っても、まだ数十枚残っています)、
1冊は活字本を、と思って、物色しましたが、
私の心をそそる本にはぶつからず。
活字本は、自分の蔵書から探すのが一番のようです。

それにしても数知れぬ本が並んでいますね。
南方熊楠は大英博物館の全蔵書を読了した数少ない一人だ、
というとんでもない伝説がありますが、
もしそうだとしたら、私は、南方ってアホだったのでは、と疑いますね。

いかに大英博物館と言えども、
一人の人間がその人生の中で読むに値する本は、
どんなに多く見積もっても、1パーセントを超えるとは思えません。
大半の本は1、2頁目を通しただけで、
読むに値しない、あるいは、自分には無縁だということが分かります。

それなのに、読み続ける?
なんのために?
どんなに速読、完全記憶力の持ち主だとしても、
無意味な活字に無意味な時間は、
自分の畢生の研究に惜しげもなく捧げるのは当然ではありませんか?

こんな伝説ができあがったカラクリを推測できそうです。
猛烈に博識、博学の人物たちが熊楠に、
自分が読んだ本を次々と持ち出して、質問攻めしたのです。
ところが、熊楠、全部、本の頁数まで上げて、論破してしまったのです。
そんな論戦を挑んだ学識者たちが幾人もいたのですが、
誰も彼も熊楠が読んだことのない本など持ち出すことができなかった。
そして、熊楠は大英博物館でずっと研究を続けたのでしょう。
そこで、いつしか、熊楠は全部読破したんだ、
そう誰かが言い出し、ひろまったのたのです。

考えてみてください。
まず、熊楠の大英博物館での履歴は、ウィミペディアによれば、こうです。
1893年(明治26年) - 大英博物館に出入りするようになる。
考古学、人類学、宗教学などの蔵書を読みふける日々が続く。
1895年(明治28年) - 大英博物館で東洋図書目録編纂係としての職を得る。
1898年(明治31年) - 大英博物館で日本人への人種差別を受け暴力事件を起こす。
1900年(明治33年) - 大英博物館から出入り禁止の処分を受ける。
最大限でざっと7年ですから、2555日、
毎日かかさず8時間博物館に滞在したとして、
合計2万440時間となります。

当時の大英博物館の蔵書数はどれほどだったでしょうか?
現在は1331万冊なのだそうです。
そこで、当時はかなり少なく見積もって百万冊だったと仮定しましょう。
大英博物館の貸し出し手続きなど知りませんが、
熊楠はどうにかして特定の図書の名前を知り、
貸出票に記載して、貸出の窓口か、ページボーイにこれを渡し、
自分の席に戻り、あるいは自分の仕事に戻ります。
後は自席で仕事を続けていると、図書が運ばれてきたのかも知れません。
でも、特定の図書を借りようと
その時間はどうしても数分はかかるはず。
1冊借りる手続きは5分と仮定しましょう。
とすると、合計500万分、83,333時間、
毎日8時間通ったとしたら、1万416日、
つまり、貸し出し手続きだけで28年半もかかった計算。

時間節約のため、数冊まとめて手続きしたとしましょう。
単純に、5分の1に節約できたとしますと、それでもなお、
100万分、1万6666時間、
毎日8時間通ったとしたら、2083日!
上記滞在時間の大半を貸出手続きに使っていたことになります。
つまり、本を読む暇がほとんどない。

でも、貸し出し手続きは全部無視してみましょう。
上記の滞在時間内に100万冊を読了できたか?
読書時間を1冊あたり、驚異の10分と仮定しましょう。
(つまり、300頁本を1頁2秒で読破するという超々天才速読術)
そうすると、1000万分、16万6666時間、6944日、
つまり、約19年間!
つまり、大英博物館に通っていた当時、一睡もしないで、
1日24時間全部読書に使って、約19年間でようやく読了!

もし熊楠が大英図書館蔵書完全読破などという、
無意味な偉業に狂奔したとすると、
そのような事の大小を判断できないような性格では、
彼は彼の業績のほとんどを上げられなかったでしょう。

よく考えてみると、
私もまあ無意味な計算に時間を費やしたものです。
こんな性格だから、ろくな仕事もできなかったのかな?

でも、熊楠という人はけた外れに人間離れした人です。
本気でやる気になった、
でも、全部読んでたら、とても間に合わない。
よし、表題だけ眺めて、読了ということにしよう、
そう決意した!
書庫をぐんぐん歩き回りつつ、書架によじ上っての作業です。
大まけにまけて、1冊10秒で全部眺めちゃおう!
これだって、まあ、大変な偉業と褒めてあげましょう。
(ご承知のように、ヨーロッパ語の本の背表紙の表題、
たいていとても小さな活字なのです。
書架の上の方、隅の方、目を近づけるための作業だけでも、
とてつもないエネルギーを要するでしょう。

でも、こんな風に簡略化しても、
1000万秒、16万6666分、2777時間、
つまり、7.6年もかかるのだ!

まあ、どんなに考えても、ただの根も葉もない誤伝、
そう考えるのが正確なようですね。




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by hologon158 | 2017-08-07 18:18 | ホロゴン外傳 | Comments(2)
Commented by pretty-bacchus at 2017-08-08 18:43
なんとおもしろい考察でしょう!
すばらし〜〜〜い! ブラーヴォ!
Commented by hologon158 at 2017-08-12 22:48
> pretty-bacchusさん
ありがとうございます。
伝説の多くがこの類いでしょうね?
ご本人が知っても、あえて否定しよとしないので、
ますます独り立ちして、長く伝えられる、
ということもよく起こっているかも知れませんね。
それにしても、毎日ブログを拝見させていただいていますが、
どんなことがあっても、不死鳥のように甦られる姿に接して、
なにげない日常生活の記事一つにも、驚愕讃嘆の思いを深めるばかりです。