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26.12 ホロゴンデイ7「2005年5月29日の滋賀五個荘町」12 夭折の天才佐伯祐三展にいろいろ思うことありて


本日は、圧倒的な芸術を体験してきました。
洋画家佐伯祐三展。
1898年に生まれ、わずか30歳で夭折した油絵画家。
天王寺公園の中にある大阪市立美術館で開催中です。
彼の全盛期のパリでの絵は古壁、旧家、窓等をモチーフとしています。
まさに、私がホロゴンで撮りたいようなものたちなのです。
実は随分昔、スーパーイコンタを持って、撮りに出かけたことがありました。
でも、あのように素晴らしく広告と経年変化に満たされた壁は、
わずか数日の滞在ではほとんど見つかりませんでした。
おそらく撤去されてしまったせいもあるでしょう。
それに、私の当時の技術ではもともと歯が立たなかったのです。
佐伯の絵は、刊行物でご覧になった方は多いでしょうが、
現物をご覧になった方は少ないのでは?
写真でも絵でも、その他もろもろの芸術すべてに言えることは、
写真、複製、印刷は、現物とはまったく別物であり、
現物の素晴らしさを伝える手段はまったく存在しないということです。
フェルメールの「デルフトの風景」でまさにそれを体験した私ですが、
佐伯の絵にもまた、フェルメールとはまったく異なる性質とはいえ、
一枚一枚、目の玉が飛び出るほどにびっくりし、
近接して細部を見て、讃歎し、驚嘆し、
離れて全体を見て、心が激しく揺さぶられました。
信じられないほどの凝縮力、エネルギー!
どうして、こんな風に家を、窓を、ドアを、壁を凝視できたのでしょうか?
全身を目にしてしまった男の渾身の作品たち。
これまで、これほどに心を揺さぶられる絵画展は見たことがありません。
私には、佐伯の絵の芯となる色は、白と赤と黒、この3色と思われました。
まず、純白、その表現しがたいほどに純粋な白に出会うと、
白って、色なのだ、
なんて素敵な色なのだろう、と今発見できたかのように、新鮮な驚き。
この白に組み合わされるのが赤と黒。
どちらも猛烈に徹底的に、赤であり黒でありという、これまたシンプルな色が、
白と響きあって、呼びかけあって、
ぐいぐいと盛り上がり(実際、彼の絵は微妙に立体的なのです)、
猛烈に爽やかで、猛烈に孤独で、猛烈に緊迫した情感を作り出すのです。
ぎりぎりにものたちに迫り、
心がものたちを突き通して、向こうに抜け、
それが絵に定着し、
今度は、絵の中から反転し、噴き出して、私たちに直撃するのです。
有名な最晩年の傑作「郵便配達夫」の白い髭の凄さ、
これは実物を見ない限り、絶対に理解できず、感じることもできません。
おっと、この絵なんか、白と赤と黒だけでできているではありませんか!
でも、一つご愛嬌がありました。
1925年の傑作「夜のノートルダム」、逆さまに展示されていました。
確かに暗黒のグラデーションで、ほとんどアヤメも分かたぬ風情なのですが、
2つの塔と深紅の大扉で、どちらが地上かは一目瞭然。
すでに5日が経過しているのに、誰も気づかないのでしょうか?
それとも、これはセーヌ川に映るノートルダムなのだという新事実が出てきたのでしょうか?
でも、図録には、ちゃんと正立した絵が掲載されています。
ちょっと理解しがたい出来事でした。

さて、こんなに凄い芸術に出会うと、
いかなる意味でも芸術ならざる、単なる記念写真にすぎない私の写真に向き合うのは、
ちょっとつらいところがあります。
でも、もともと無関係なのですから、気にすることなんかないな、
そう考え直して、4枚選んでみました。
なぜか、塀、垣根。
やはり、香り豊かな芸術の園から閉め出されて、
自分勝手に遊んでいる自分がちょっとかわいそうという気持ちからかも知れませんね。

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by Hologon158 | 2008-09-14 20:58 | ホロゴンデイ | Comments(0)