わが友ホロゴン・わが夢タンバール

2017年 04月 16日 ( 1 )

683.04 ホロゴン外傅194「2017年2月6日奈良町にパンタッカー50㎜F2.3一閃」4 人形浄瑠璃2

4月12日水曜日、文楽4月公演でした。
午前10時50分、無事指定席に収まりました。
私たちの席は舞台正面、前から3列目。
人形浄瑠璃のドラマは通常、
客席から向かって中央からほんの少し左よりのエリア、
つまり、私たちの席の正面あたりで展開されます。
たとえば、建物の内外での出来事が展開するとき、
建物は舞台の右3分の2を占めるようにして置かれます。
その左端が玄関で、主人公たちが出入りしながら、演技するわけです。
つまり私たちの席はいつも視線を少し移すだけで、
全部しっかり観ることができます。
しかも、私たちの前の1列目、2列目は高齢の女性ばかりなので、
舞台への視界を邪魔するものがありませんでした。

そのうえ、時には右手奥で語る義太夫語りの姿も見たいものです。
難解な江戸時代の言葉遣いのときは、
オペラ並に、正面舞台上の天井近くに設置された電子掲示板も眺められます。
1、2列目は真上になるので、かなり見づらいようです。
つまり、最高の席で楽しめたわけです。

今回の演目は、「寿柱立万歳」という前座の狂言の舞いです。
これはアウトでした。
太夫と才三という名の二人の踊り手が、人形は終始右に傾いていて、
足ともぜんぜん連携がとれていませんでした。

左手が十分鍛えられていないので、人形の重みを支えられない。
そこで、腕を自分の体の方に傾けて、少しでも支えを強化したい。
ちょっとでも、左側、つまり、身体の外に傾けたら、
重い人形がぶったおれてしまうのかもしれませんから。

でも、生活の場面で、人が身体を傾斜させていたら、
あれ、この人、ちょっと身体に問題があるんじゃない?
そう考えてしまうでしょう。
これじゃ、まだまだ未熟だなあ、と最初はがっかり。

本番の出し物は、
「菅原伝授手習鑑」通し公演。
ほんの一部ですが、ひさしぶりの通し公演です。
幾人かいる主人公の中でもトップの松王丸を吉田玉男、
松王丸の女房千代を桐竹勘十郎、
桜丸を吉田蓑助がそれぞれ演じて、抜群の出来でした。

今では立役はすべて玉男が演じています。
先代玉男の弟子でした。
男前で大柄でしたが、いつも大味で、ちょっと動きも遅く、
本当に後継者になれるんだろうか、いぶかしんでいました。
この何回かの公演で、彼が人形を使う姿を見て、
この人、公演ごとに経験を積んで、本物の玉男になりつつあるぞ、
という確信が強まりつつあります。

勘十郎は父先代勘十郎の子。
お父さんは、先代玉男の陰になって、いつも悪役に回されていながら、
その黒ダイヤのような強靱な個性故に人気を呼んだ人ですから、
文楽きっての跡取り御曹司の一人と言えます。
父に似て、ちょっと悪党風のの面構えで、
あくどい役もこなしますが、立て役も娘の役もこなせる、
オールラウンドプレーヤー。
今回の女房千代の演技を見て、
この人、立役者は玉男に譲って、女役の蓑助の後継者になれるかも、
という気持ちが俄然頭をもたげました。
それほどに勘十郎の遣う女房千代は繊細可憐で優美でした。
道真公の嗣子である菅秀才の身代わりに、
我が子の命を捧げる薄幸の母の悲しみを実に繊細に表現しました。
かつての名女形、先代清十郎も、
たまに女形を遣う先代玉男も見せたことがないような、そして、
蓑助以外には見たことがないほどのデリケートな名演でした。

そして、もう一人。
「寺子屋の段」の切(クライマックス)を語った義太夫語り豊竹咲太夫。
伝説的な義太夫語りの名人、綱太夫の跡取り息子です。
この人は、三味線の鶴澤清治と並んで、
人間国宝に一番近いだろう、そう思わせるほどの精妙で変幻自在、
広大なダイナミックレンジの語りで、まさに圧倒的でした。

正月公演までは、文楽の未来にかなり悲観的だった私も、
三味線清治、義太夫咲太夫、人形遣い勘十郎、玉男が背負って立つ限り、
文楽は安泰だなあ、という感じを初めて抱くことができました。

ただ一つ、文楽に注文したい。
マイナーな出し物を復活し、おさらいするのはある程度にとどめ、
本来の文楽の姿を見せる最上の出し物をどんどん採り上げてください。
マイナーな出し物がマイナーになったのには理由があるのです。
つまらない、荒唐無稽、矛盾だらけ等々。
むしろ最上の演目こそ文楽の華、そんな出し物を多く採り上げることで、
伝統の技を鍛え、伝承することができるのですから。
その合間に、演出やちょっとした改良を加えることによって、
見違えるほどによくなるような作品の触りだけのアンソロジー、
その程度にしてほしいですね。

あんまりすてきな公演だったので、
久しぶりに心斎橋のフランス料理店アミチエで夕食を頂きました。
幾度も書きますが、私はグルメじゃありません。
でも、すてきなコンサートや文楽公演の後、
天ぷらうどんじゃ、やはり気分が出ませんね。
すでに6年に及ぶ若いシェフは天才と言ってもよいほどの腕前。
品のよいさわやかな味わいで、
野菜をかなり使いますので、身体に負担もかけない。
見栄えも素晴らしい。
グルメじゃない私でも夢中になります。
こんなすてきな一日の締めくくりはやっぱり近鉄特急で帰りたい。
料理の終わり加減でさっとヤフー路線情報を調べて、
8時20分難波発奈良行き特急に間に合いました。

揚琴と水素吸引のおかげでしょう、
心斎橋の雑踏でも、地下鉄、地下街の雑踏でも、
ゆったり町歩きを楽しむ観光客や、疲れた通勤客の隙間をすいすいと縫って、
高速で進むことができました。
気分が良い日はなおさら高速化します。
妻も元気ですから、なんとかついてきます。
地下鉄御堂筋線では、折りよく到着した電車のできるだけ後方に乗ろうと、
またも高速化して、出発直前に飛び乗った車両はなんと終日女性専用車両でした。
さっと飛び降りたい気分でした。
ま、それは別として、
一年になんどかしかないゴージャスな一日でした。





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  [後書き]

   普通はしないことをやりました。
   私のナチュラル主義に反するからです。
   でも、「病人閑居して不善を成す」って、言うじゃありませんか?
   言わないかな?
   まあいいでしょう。
   最後の写真をひっくりかえしたのです。
   
   写楽の役者絵に似ているのが面白くて撮ったのですが、
   なんだか気持ちが落ち着かない。
   そこで、ひっくり返して、納得。
   韋駄天の飛脚が駈けていました。
   まあ、どちらにしても、そう見える方などいないでしょうから、
   私一人の納得のための修正。
by hologon158 | 2017-04-16 22:37 | ホロゴン外傳 | Comments(0)