わが友ホロゴン・わが夢タンバール

2017年 09月 25日 ( 1 )

703.104 ホロゴン外傅210「2017年8月25日パンタッカー50㎜も奈良町に」4 不染鉄展



奈良県立美術館に参りました。
「没後40年 幻の画家 不染鉄」
ウィキペディアによれば、
「その作品は、
「克明な描写と、古絵巻に学んだ大和絵的手法を融合した作品」と評され、
「俯瞰と接近の相まった独創的な視点」も特徴として挙げられる。」

まったく未知の画家です。見甲斐のある展示であることを祈りつつ、
800円を渋々払いました。
でも、この出費は大いに有益だったようです。

入館して、展示作品の数枚目「夕月夜」を見て、
いきなり、心がふんわり躍りました。
縦長の構図ですが、
山水画特有の遠近法を無視して、
下から上まで細かく描く手法ではなく、
下4分の1ほどに3戸ほどの家の輪郭が
背後から光に照らされてふんわり浮かび上がり、
上部(半分以上)は縦の線が光の中にほんのり浮かび上がるだけ。
私の大好きな光の描画です。

元来大和絵と水墨画の修行を積まれた方なのでしょうか?
横長の長巻図の「水郷の巻」「思い出の記」は傑作。
水郷、田園の生活を精密に描きこんで、見飽きません。
猛烈に細い筆で見事な描線で生き生きと描かれています。

昭和10年の「雪景山水」は縦2m、横86cmの堂々たる掛け軸。
描線がしっかりして、リアルなのに、思い出の中の光景。
この画家はいつも自分の心の中の桃源郷を描いていた、
そんな感じ。

線画の掛け軸「聖観世音」が2枚。
うち、大きい方の金泥が少し施された方が秀逸。
線画なのに、量感がみなぎっていて、
この画家が並々ならぬデッサン力を持つことを証明する力作。

代表作の一つが、
《山海図絵(伊豆の追憶)》大正14(1925)年 木下美術館蔵
186cm×210cmと、比較的大きな絵です。
グーグルで検索していただければ、ご覧いただけますが、
絵の大きさ以上に、スケールの大きな鳥瞰図。
でも、ヨーロッパの大画家たちのように、
見上げるほどの超巨大な絵ほどではありません。
むしろ正面に観ながら、静かに味わう絵。

観るうちに、だんだんと不思議な印象が大きくなります。
西洋的なパースペクティブではなく、
なにか心理的な遠近法によって描かれているようです。
なによりも不思議なのは、富士山がただの小山なのです。
周辺の建物の高さを考えると、せいぜい200mほどの小山。
でも、堂々たる風格で、画全体を支配しています。
これが不染鉄の魔術なのでしょう。

戦後の晩年になると、漆黒が画面を支配するようになります。
なにか画家の心の奥底の闇を表すようです。
漁村に画家自身が住んだのでしょうか?
海浜の絵が幾枚もあります。
「夜の漁村」が一番気に入りました。
浜よりも一段高い平面の平屋建てのガラス窓は
屋内の証明が住人のシルエットを浮きだしています。
斜面の浜には数隻の漁船が引き上げられています。
岸近くの海には2隻の漁船が浮かんでいます。
これらの漁船がすべて黒のグラデーションで、
漆黒の闇の中に実にリアルに浮かび上がります。
これも不染鉄の魔術。

でも、晩年の奈良の神社仏閣の絵では、
ペンキのような漆黒がべったり塗りたくられた感じで、
定規で引いたような直線が目立つ一方では、
若い頃の、心を平安で満たすような穏やかな表現は
すっかり影を潜めてしまい、どうもいただけませんでした。
アートが作家の心の表現であるとすれば、
なんだか推測したくなります、
晩年の不染鉄の心には黒々とした苦悩が巣くっていたのでは?

生涯を通じて、リアリティがファンタジーに変容していく、
言葉では表現できず、絵筆でも描き出せない玄妙な移りゆきを、
魔法のように一枚の絵に結晶させる、そんな魔術世界に生きた人、
そんな印象を抱かせられました。

この絵画展で私が強く抱いた印象が一つあります。
回顧展は画家のメッセージを伝える媒体にはなりえないなあ。
不染鉄の画業の最高点を示す10枚を1壁面1枚で見せてもらえたら、
遙かに雄弁で、遙かに印象深かった、そんな感じがします。
でも、それにはあまりにも壁面が大きすぎます。
つまり、美術館は、本当の芸術に対峙できる場にはなりえない。

バカ言え、一枚ずつしっかりと対峙すれば、よいのだ!
お前の鑑賞力の弱さを暴露しているのだ!
第1、なにが傑作かを自分で選別できない人間が、
見せる側にその選別を任せる、三流の鑑賞者の姿勢だ!
そう厳しくおっしゃる通の方もおいででしょう。

おっしゃるとおりですね。
でも、私は三流の鑑賞者だから、当然の姿勢です。
私の場合、傑作の後に駄作が並ぶと、
どうしても、幾本ものの邪魔物が
心の中に放り込まれる感じがしてしまうのです。




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by hologon158 | 2017-09-25 12:12 | ホロゴン外傳 | Comments(0)