わが友ホロゴン・わが夢タンバール

39.35 ホロゴン写真展2「2003年夏のネパール」35 もう少し、眼にこだわらせてください

39.35 ホロゴン写真展2「2003年夏のネパール」35 もう少し、眼にこだわらせてください_c0168172_21541833.jpg

ここにアップしたのは、仏陀の眼。
古都パタンの小さなお寺の祭壇の隅にひっそりと置かれた小さな彫像。
前回の映画主人公と同じくらい大きく眼を見開いています。
何ごとも見逃さない。
でも、その瞳の柔和なこと、どうでしょう?
何ごとも見逃さないのですが、
人間の業を知るがゆえに、あたたかく見守るのです。
これは仏だけができる眼差し。
でも、別の眼もあります。
長崎で見た舟越保武の彫刻「聖ベロニカ」の眼。
重い十字架を背負ってゴルゴダの丘に上ろうとするイエス。
そのイエスの血と汗とをぬぐった女性がベロニカ。
聖書には記載がないので、
このお話の出典は私には分かりません。
舟越はこの伝説の女性を、なかば口を開いた繊細な美貌の少女として彫りあげました。
その眼がたとえようもなくやさしいのです。
罪を許す仏陀の天上的なまなざしではなく、
同情と哀れみを満々とたたえた、極めて人間的な眼。
石からこのような表情を掘り出す彫刻家の至芸。
そして、マリア・カラスを思い出しました。
リサイタルで、次々と異なるオペラのアリアを歌います。
前奏が始まると、少しずつ少しずつ、カラスの表情が変貌するのです。
それぞれのヒロインの性格、感情がその全身から発散するようなのですが、
一番印象的なのが、カラスの眼。
愛、怒り、嫉妬、哀れみ、憧れ、さまざまな情感を、
眼だけで演ずることができるカラスは稀代の名優だったのです。
これらすべての表情を可能にする人間の眼って、
なんて素晴らしいのでしょうね。
by Hologon158 | 2008-11-16 21:55 | ホロゴン写真展 | Comments(2)
Commented by NK at 2008-11-17 04:12 x
おお、マリア・カラスの目を実際に見ておられるのですね! そのご経験をこのようにシェアしてくださって、ありがとうございます。
それに応えて、ひとつシェアしましょうか。まだ駆け出しのピアニストだったころのアシュケナージの半眼をボクは10メートルほど離れた最前列で見ているのです!吉祥天かと。
Commented by Hologon158 at 2008-11-17 13:56
re)NKさん
オーノー!
残念ながら、カラスがじかに見れるほど、私は歳をとっていません。
数枚のDVDで見ただけ。
カラスとグールド、この2人はじかに見たかった、聴きたかった!
NKさんはアシュケナージを最前列で見たのですか?!
うらやましい!
偉大な演奏をじかに聴く、
偉大な芸術作品を自分の眼で見る、
そして、さまざまな永遠の光景の場に立ち会う、
こうした美の体験は死ぬまで忘れないでしょうし、
そんなさまざまな体験の堆積が自分自身なのだという思いで、生きています。