わが友ホロゴン・わが夢タンバール

43.14 ホロゴンデイ19「2006年12月16日丹後伊根」14 気配どころか自分まで消すなんて


気配を消す名人NIさん、
あっけなく自分も消してしまいました。
彼と旅に出ると、夜、いつもウィスキーを楽しみました。
アイルランドを2週間旅したときなど、
アイリッシュ・ウィスキーを半ダースは平らげたものでした。
私はそんなに呑みませんから、彼がその大半をお腹に収めたわけです。
その呑み方がまた凄いのです。
生のまま、アテも頂かず、ぐいぐいと流し込むのです。
それなのに、乱れないので、いよいよ危ない呑み方。
生涯独身で、大学教授と来るのですから、自由。
日常生活では夜昼が逆転していました。
深夜、1人仕事をしながら、
ウィスキーをお茶のように流し込んだに違いありません。
おそらくそれが命取りになったようです。
私には思われるのです、
なんだか彼は死に急いだのではないか?
カウンセリングで蓄積した心の澱が次第に彼を闇に追いやったのでは?
ある日、電話をしてきて、食道癌だと告げました、
「さっそくインターネットで調べたら、
致死率60%、最悪の癌なんだって」
彼の軽い口調に、私は、言葉がありませんでした。
奇しくも、私の上の義兄の親友が主治医となりました。
そして、下の義兄の紹介で、ある国立がんセンターに転医したのですが、
その義兄自身が後に肺ガンで同じ病院にお世話になるとは、
なんだか因縁めいたつながりを感じてしまうのです。
NIさんの葬式には参りませんでした。
というより、参れませんでした。
肝胆相照らす仲だっただけに、
その死を受け入れることはできなかったのです。
ともに老いて、幾度も幾度も旅をともにすることを、
退職後の楽しみの一つとしていたのに。
彼と語り合うことは、私にとっては、
一種の懺悔であり、カタルシスであったのに。
今でも、彼が世を去ったことを私は受け入れていません。
ただ、自分を消しているだけ、そう感じるのです。
いつか、ひょいと現れて、ちょっと物憂い辛辣な声が聞こえてきます、
「暇だったから、ブログ、全部読んだよ、
文章はなってないし、
自分で言うとおり、内容もデタラメばっかりだよ。
やっぱり人間のこと、ぜんぜん分かってやしない!」

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by Hologon158 | 2008-12-23 18:04 | ホロゴンデイ | Comments(2)
Commented by andoodesign at 2008-12-24 09:56
ご友人のご不幸、お悔やみ申し上げます。
アイルランドの旅はご友人にとっても大切は思い出になっていることと思います。
大好きお酒を我慢して長生きするのが幸せなのか...、それとも...。
なんとも複雑な気持になりました...。
Commented by Hologon158 at 2008-12-24 22:50
re)andoodesignさん
おかしなものです。
彼の死は私にとっては大いなる不幸でしたが、
彼にとってどうだったか? そう考えると、複雑なのです。
たとえば、モーツァルト、シューベルト、佐伯祐三、
こんな天才たちは、実は創造すべきすべてを生み出して、
あの世に行ってしまったのではないかと、私は感じるのです。
NIさんも同様です。
あれから考えるのですが、どうもありったけの人生を生きつくして、
ぽんとあの世に移ってしまったのかも知れません。
でも、そうではないかも知れない。
死というのは、なかなかに納得の行かないものですね。