わが友ホロゴン・わが夢タンバール

52.10ホロゴン外傳7「1989年8月パキスタン」10 牛腸茂雄よりも長生きしてしまった私


私の知る限り、インターネット界屈指の写真ブログの主が新潟の写真家、yoshiさんです。
(http://yoshipass.exblog.jp/)
独特の深みを感じさせる写真が続々と登場する、すごいブログ。
このyoshiさんが一昨日、牛腸茂雄について触れておられました。
同郷ですから、ひょっとしたら、ご本人を知っておられるかも知れません。
牛腸茂雄
懐かしい名前ですね。
私は彼のオリジナルプリントを見たことがありません。
私の宝物写真集のひとつ「牛腸茂雄作品集成」(共同通信社刊)だけが、
私の情報源です。
幼児に胸椎カリエスにかかって、大きなハンディを負い、
1983年、36歳にして夭折してしまいます。
牛腸は、自分の写真は、見過ごされてしまうかもしれないぎりぎりのものであるが、
じっくり何度も見ることで、じわじわ味わいの出てくる写真、
そう考えていたそうです。
まことにその通りの写真の数々。
低い背を活かして、独特の低い視線から、日の丸構図で、
見事に安定したポートレートを撮りました。
ほんとうに、なんにもてらいがないように見えて、
実は、心の奥底からにじみ出てくるような、ある種の執念を感じさせられます。
最高傑作は、自費出版をした写真集「Self and Others」1977年でしょうか?
彼の生涯を考えますと、なぜか涙なしに見ることができません。
あっさりとした明暗の、グラデーションの整ったモノクロームが、
なぜかシューベルトの音楽のような味わいを醸し出しています。
そして、なんだか感じるのです。
この人、自分に残された時間があまりないと知っていたんだな。
もちろん私は彼の人生の結末を知っているので、そう感じるのですが、
でも、死を感じつつ生きている人と感じないで生きている人との間には、
猛烈な懸隔があるように思えるのです。
たとえば、哲学者カール・ヤスパース。
脊髄に問題を抱えて夭折を宣告されたまま、80過ぎまで生きたのです。
長生きしたとはいえ、彼の文章にはいつもその背後に死が控えていたように思えます。
ですから、牛腸もまた同じような想いを心に秘めて、
一枚一枚の写真を一期一会と感じつつ撮っていた、
そう思えてしかたがないのです。
いささかも死を感じないで、ぶっとばしている私の写真に、
深みなどかけらもないのは、むしろ当然なのでしょうね。

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[後書き]
牛腸茂雄に気を撮られて、写真のことを忘れていました。
インダス川の朝、
これほどに清らかな空気感に満ちた川を私は知りません。
白砂がどこまでも続き、
清浄の地とはこんなところだろうなと納得しました。
インダス流域で仏教が大きな展開を遂げたのも、
この川のたたずまいを知りますと、むしろ当然だったと思えます。
雑念をすべて振り払い、
永劫のときの流れの中に身を浸す、
そんなことができる地、それがここだったのだな、
河畔に一人立って、そう納得できる思いでした。
by Hologon158 | 2009-02-22 16:08 | ホロゴン外傳 | Comments(4)
Commented by yoshipass at 2009-02-22 22:19
こんばんは!
最初の数行、恥ずかしすぎます^^;

実は、彼の写真、気になることがあって、今日もいってきました。
その様子、アップしました。
宜しければご覧ください。
Commented by Hologon158 at 2009-02-22 23:09
re)yoshiさん
いえいえ、私は本気でそう考えています。
前にも幾度か、そう書きました。
私は、写真は下手で、自分の写真を自分の写真だという、ただそれだけの理由で大切に思う、ただの素人ですが、
どうやら芸術を見る眼だけはあるのです。
信じてください。
Commented by top-to-toe at 2009-02-22 23:10
こんばんは。yoshiさんのところからきました。

これ、インダス川なんですね。
水場の写真は、好きです。
白砂がどこまでも続くというのは見てみたいです。
Commented by Hologon158 at 2009-02-22 23:46
re)top-to-toeさん
はじめまして。
No.12の写真をごらん頂けば、インダスにはたえず砂が押し寄せているのです。
でも、大きな水流があります。
インダスは砂を押しのけながら、砂を押し流すことで、
気の遠くなるような長い歴史を作ってきたように思います。
水と砂の軋轢、衝突、摩擦が、砂を強烈に細かいものにしているようです。
だから、真っ白なのです。
私には忘れられない光景なのです。