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60.02 ホロゴンドラマ6「和歌山の旅① 勝浦」02 雪舟の絵でなにが独創的か?

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雪舟の絵でなにが独創的かと言えば、
「秋冬山水図」の冬でしょうね。
雪舟は、下半分だけはまともに水墨画しているのです。
でも、上半分はちょっと見には訳が分からない。
左側に煙るようにおぼろに薄らぐ山系が描かれています。
まず、その雄勁な筆遣いに驚かされます。
もうここで抽象画になっている。
でも、もっと凄いのは、その山系を遮っている中央の垂直線。
これを見て、ただちに右側から張り出してきた崖の断崖だと分かる人は、
当時おそらく一人もいなかったでしょうし、
今でもほとんどいないのではないでしょうか?
私に長い間分かりませんでした(そんなとろいの、僕だけかな?)。
そういえば、底部あたりに、それらしい岩の表現があります。
でも、上に行くにつれて、なんにもなくなってしまいます。
崖の左側の張り出しを表現するはずの垂直線など、
ふっと消えてしまい、途中で尻切れトンボ。
こんな風に、絵を途中で描くのをやめること自体、斬新ではありませんか?
誰かに題讃を書いてもらうための余白とも考えられますが、
プリントで見る限り、左の山系の上の曇天、右の崖の地肌は、
それらしく薄墨がかけられているようなのです。
しかも題讃などついに書かれないまま、だだっぴろい空間が上半分に残されている。
こうなると、雪舟は、なんらかの芸術的意図のもとに、
上半分をわざと書き残した、そうとしか思えないのです。
書き残しは水墨画にはさほど珍しいことではないでしょう。
でも、こんな風に謎の線をぐいと引いて、
さあ、これなんだか分かるかいと言わんばかりにする、
室町時代にそんなことを考えた人がほかにいるでしょうか?
そう考えると、雪舟という画家、かなり変わっていたのでは?
そう思わざるを得ませんね。
いかがですか?
by Hologon158 | 2009-04-05 14:40 | ホロゴンドラマ | Comments(0)