わが友ホロゴン・わが夢タンバール

82.24 ホロゴンデイ24「2009年1月10日壷阪山は寂しく雪交じり」24 三人の共通性は?

樋口一葉
太宰治
宮沢賢治
この三人の共通性は?
そう尋ねられたら、私は言いたいですね、
明晰さ!
どんな文章を取り出しても、文章を一字一字読むにつれて、
その言いたいことがはっきりと分かる、
そんな文章を書く人はとても少ない。
この三人はその最高の作家たち。
試しに、太宰の短編集のページを開いてみました。
「カメラ」の字を見つけました。
書いてみましょう、
「あなたはあの頃、画家になるのだと言って、たいへん精巧のカメラを持っていて、ふるさとの夏の野道を歩きながら、パチリパチリだまって写真とる対象物、それが不思議に、私の見つけた景色と同一、そっくりそのまま、北国の夏は、南国の初秋、まつかに震えて杉の根株にまつはりついている一列の蔦の葉に、私がちらと流し目くれた、そたんに、パチリとあなたのカメラのまばたきの音。私は、そのたびごとに小さい溜息吐かなければならなかった」(「二十世紀旗手」)
(この文章、この後がどんでん返しで、抱腹絶倒。読んでみてください)
読点なしの羅列のように見えて、文脈、骨格がはっきり見えてくるので、
すいすい理解できる、でも、ただの文章ではない、
言葉の美しさが情緒の香りを豊かに匂わせる、稀有の文章!
宮沢、樋口も、私には同格の最高峰。
明晰だけど、しっとりとしている。
明晰だけど、麗しい。
ふっと、今、気づきました、もう一つの痛切な共通性に。
樋口24歳、宮沢37歳、太宰39歳、
みんな若くして逝ってしまった。
日本文学の巨大な可能性を天は奪ってしまった。
今、文学は多産の時代、
数知れぬ作家たちが数知れぬ小説を発表しています。
でも、まるでディジタルカメラで撮ったかのよう(ディジタル愛好家の皆さん、ごめん)、
長大で精密、でも、つるっとして、心にちっとも残らない。
だから、豊饒の時代とは言えない、そうではありませんか?

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by Hologon158 | 2009-06-16 21:33 | Comments(0)