わが友ホロゴン・わが夢タンバール

92.22 ホロゴンデイ26「2007年9月1日京都東山でもロボグラフィ」22 銀のアトムに溶け

宮澤賢治の「春と修羅」を開いていて、一つの詩にびっくりしました。
まあ、読んでみてください。

    風景とオルゴール

      爽やかなくだもののにおひに充ち、
      つめたくされた銀製の薄明穹を
      雲がどんどんかけてゐる
      黒曜ひのきやサイプレスの中を
      一疋の馬がゆっくりやってくる
      ひとりの農夫が乗っている
      もちろん農夫のからだ半分ぐらゐ
      木立やそこらの銀のアトムに溶け
      また自分でも溶けてもいいとおもひながら
      あたまの大きな曖昧な馬といっしょにゆっくりくる...
                                (後略)

情景を心に描いてみてください。
近くにリンゴ畑かなにかがあるのでしょうか?
秋の大空でしょうか?
雲がぐんぐんと走り、
ひのきや糸杉の林の間道を馬が来るのです。
人も馬もゆらゆらと陽炎のように揺れている。
でも、ただの陽炎ではありません。
情景が全部溶け合い混じり合っているのです。
単なる風景点描ではありません。
詩人の心が風景と溶け合って、揺れている。
以前読んだときには感じなかったこと、それは、
この情景って、なんと、キノプラズマートかタンバールのような描写!
ひょっとすると、写真は人に外界のもう一つの見方を教えてくれるのかも知れません。
タンバールを使ってみなければ、こんな風に感じることはなかったでしょう。
この詩は1923年の作ですから、まだタンバールもキノプラズマートもなかった。
でも、賢治は、想像力豊かな詩人なのです。
「銀のアトムに溶け」ですって?
まるで銀塩フィルムの描写じゃありませんか?
この情景が彼の心に描き出した印象は、ひょっとすると、やっぱり、
タンバール、キノプラズマート風だったかも知れませんよ。

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by Hologon158 | 2009-07-16 14:43 | ホロゴンデイ | Comments(0)