わが友ホロゴン・わが夢タンバール

98.36 ホロゴンデイ29「2006年6月24日大阪今里にはほんとの路地裏が残っていた」36 記憶喪失へ!

記憶喪失って、どんな状態なのでしょうね?
えっ、よく喪失するって?
それは、あなた、記憶喪失ではなくて、ただの物忘れ!
ここで言う記憶喪失は、いわゆる「逆行性健忘」というものです。
なんらかの心身の理由で、自分の名前、素性を含めて、過去のすべてを忘れてしまう症状。
そんな症状になったら、どんな状態になるか、想像できますか?
できませんね。
自分の存在そのものがなくなるのです。
自分が記憶していた大事なことも大事でないことも全部消えてしまう。
空中高く、一人なんの支えもなく浮かんでいる、そんな感じでしょうか?
恐怖、不安、不信、惑乱、あらゆる消極的な心的状態が怒濤のように押し寄せることでしょう。
しっかり両脚を踏みしめることができる地盤が突然消え去るのですから。
「心の旅路」の主人公は、ある日、頭を打ったのでしょう、記憶を取り戻すのです。
でも、記憶喪失となった戦争中の負傷時から現在までの記憶だけ、つまり、
記憶喪失状態で生きてきた期間中だけがぽっかり穴を空いたように抜け落ちてしまいました。
記憶ががらりと交代したわけです。
その期間になにをしていたのか?
まったく新しい不安と困惑が主人公を襲います。
片脚の地盤は戻ったけど、もう一方の脚は断崖の外に宙ぶらりんになっている感じでしょうか?
小説では、主人公と会話を交わす相手は、ときおり、主人公の視線に驚くのです。
こちらを見ているのに、なにか別のものを見ているような視線。
主体そのものが宙ぶらりんなので、対象もまた定まらない。
こんな風に考えてきますと、私たちは、なんと幸せなのでしょうね。
私たちの人生、ときには、難破しているかも知れません。
小さなボートにしがみついて、怒濤の中を押し流されているかもしれません。
でも、自分が誰で、なぜ難破したのか、一応、分かります。
でも、記憶喪失では、この小さなボートにしがみついている自分が誰なのか?
なんで難破したのか?
それ自体が分からないのです。
分かれ道に来たとき、右に行けばよいのか、左に行けばよいのか、選択することができます。
記憶喪失では、その選択ができない。
自分がなんのためにここに来たのかが分からないのですから。
でも、ときに、自分の存在そのものからすっかり自由になって、
まったく新しい自分を一から作り上げたい、再出発したい、新鮮な気持ちを味わいたい、
そんな気持ちになることだってありますね。
歳をとればとるほどに、そんな気持ちが大切になってきます。
「新しさ」、人生にとって、これが最高の価値であると感じることがあるからです。
自分で自分を忘れてみる、自発性記憶喪失、
これを試してみるのも良いことかも知れませんね。
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by Hologon158 | 2009-08-10 12:09 | ホロゴンデイ | Comments(0)