わが友ホロゴン・わが夢タンバール

102.06ホロゴンデイ31「2005年11月12日大阪御堂筋の週末は暇で暇で」6 麗しき出会い

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前回書いたヤスパースとゲルトルードの出会いのことをまだ考えています。
思うに、ゲルトルードは、弟から、友人を紹介したいと告げられていたのです。
弟が部屋をノックしたとき、
彼女は、弟の横に、彼の友人を見いだすことを予期していたのです。
弟エルンスト・マイヤーは、医師となり、生涯、ヤスパースの心の友となります。
ヤスパースは、その人となりについて、こんな風に書いているのです。
「彼のまわりには、およそ理性というものでは汲み尽くせぬなにかが漂っていました。
それはデモーニッシュな近づきがたいものではなく、
彼の本来の姿として、無際限に明瞭になりゆくものでありました」
ヤスパースは主として、後年、この友人との交わり、対話を通じて得た悟りを、
彼の主著「哲学」に注ぎ込んだのだと述懐しています。
そんなエルンストにとっても、ヤスパースは、当時まだ若いとは言え、
特別の存在であったことは、容易に推測されます。
彼は、仲の良い姉に向かって、すでに幾度も幾度も、
この親友が並外れた人物であることを話していたに違いありません。
ヤスパースという人を、彼の哲学や自伝を通じて、
私は、格別に徳の高い、偉大さに溢れた人物であったと考えています。
そうだとすれば、ゲルトルードは、実際に会う前からすでに、
ヤスパースという人について言いしれぬ想いを抱いていたのかも知れません。
いざ会う段になって、ヤスパースと初めて視線を交わすことに、畏怖、気後れを感じ、
さらには、弟から受けた印象とはどこかちぐはぐの、
とても共感できない人物だったらどうしようという怖れもあって、
かなりナーバスになっていたに違いありません。
でも、ノックの音が部屋に響いたとき、その瞬間、
ゲルトルードは、すべてを運命に委ねよう、
弟が心酔している人物なのだから、弟を信頼しよう、
そして、曇りのない目で、弟の心の友がどんな人なのか確かめよう、
そう考えて、心を澄ませたのです。
机からすっと立ち上がり、静かに本を閉じたゲルトルードの動作、それは、
自身を落ち着かせるためであり、決意をあらわにする行為だったのではないでしょうか?
ヤスパースは、その姿に、すでにゲルトルードの澄んだ心と気高い魂を感じ取ったのです。
私には、そんな風に感じられるのです。
by Hologon158 | 2009-08-21 23:57 | ホロゴンデイ | Comments(0)