わが友ホロゴン・わが夢タンバール

138.18 ホロゴンデイ41「2009年8月15日平野の下町人生また楽し」18 平凡だけど驚き!

「常山紀談」という戦国武将逸話集にこんな話が載っているそうです。
信長が諸国の武将等にさきがけて上洛を果たしたとき、
坪内という包丁人を呼んで面前で調理させたのです。
そのとき、厳しく申し渡しました。
        「うまくなかったら、首をもらうから、そのつもりで作れ」
ずいぶん乱暴な話です。
坪内が作った料理を食べた信長、即座に、
        「首をはねてしまえ!」
すると、坪内が動ずることなく口を挟んだそうです。
        「もう一度、作らせてください。
それで駄目なら、首をはねていただいて結構でございます」
戦国の料理人、肝っ玉もできていたようです。
次に作った料理は信長を大変に喜ばせ、
お抱えの包丁人に召し抱えられたということです。
坪内のやったことは実に簡単なことでした。
薄味の京料理で駄目なら、濃い塩味の料理を出してみよう。
考えてみますと、信長は生粋の尾張っ子です。
ドラマチックな味わいがもてはやされる現代名古屋の風潮、文化は当時からかもしれません。
あなたは、関西の料理を関西でいただいたことがありますか?
とても薄味で、あっさりしているのです。
家庭料理も同様です。
一升瓶の薄口醤油、我が家では、半年は軽く持ちます。
私のかつての同僚夫婦は、東京からきましたが、1ヶ月になんと一升瓶2本!
この差は強烈です。
その後、信長の料理を濃い味で作りながら、
この坪内、さぞかしつまらない思いをしたはずです。
薄い味わいは、音楽で言いますと、ピアニッシモ。
このピアニッシモからフォルテッシモまで出せる演奏家と、
メゾフォルテからしか出せない演奏家とでは、
どちらの音楽が豊かなニュアンスを出し切れるか、聞かなくてもおわかりですね。
関西料理の味が薄すぎて、つまらないと、あなたがお感じになるとすれば、
それは子供の頃から濃い味ばかりになれてしまい、感覚が鈍磨してしまっているからです。
おっと、また失礼なことを言ってしまいました。
        (この失言で、中部、関東以北のアクセス、がたっと減るだろうな)
でも、濃い味を喜び味わえば味わうほど、
あっさりとした味の妙味をエンジョイすることはできなくなります。
これはすべての芸術に通じます。
私は、味覚は、関西流の濃淡のダイナミックレンジの広大な料理を喜び、
さまざまなジャンルの芸術でも、同様ですが、
残念ながら、写真だけはフォルテからフォルテッシモまでのレンジにせばまってしまいました。
ホロゴンと出会って、
「驚き」を感じられる、そんな写真ばかりを追い求めるようになってしまったからです。
こんな風に書きますと、こうおっしゃるかもしれませんね。
        「ふーん、このブログの写真、どこにも驚きなんかないよ。
         ただのありふれた超広角写真じゃないの?」
すみませんね。
そんな風にお感じになるということは、
あなたがもっともっと驚きの写真をたくさんごらんになっているからでしょう。
もっとも、私が言います「驚き」は写真としての驚きではありません。
出会いの驚き。
写真としては、私のはすべて単純な超接近水平垂直撮影法で撮られた平凡写真です。
でも、そんな平凡な撮り方で、
路地裏で、こんなものに出会うとは思わなかったという出会いの驚きを記録しているのです。
ただ、単に私の驚き。
たいていの人には、驚きでもなんでもないでしょう。
そんな方は、このブログとは無縁なのです。
こんなところで貴重な時間を費やさないでおきましょうね。

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     [後書き]
        この写真がなんで驚きなんだ?
        あなたはそうおっしゃることでしょう。
        でも、私は、こんなものに出くわすと、心底びっくりするのです。
        理屈の問題ではありません。
        緑の線香花火!
by Hologon158 | 2010-02-22 18:24 | ホロゴンデイ | Comments(0)