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182.08 ホロゴンデイ54「2010年7月17日天下の祇園祭なのに裏道伝い」8 漆黒の大海原に


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月の上に出た青い地球の衛星写真は、衝撃的でした。
    私たちの故郷である地球の美しさもさることながら、
    球面のほとんどが海、
    大地はその深い海にうかぶ飛び石に見えたからです。
    地球は、海の惑星なのです。
衛星から見た地球は、大宇宙に類い稀なる美女。
    でも、近づいてみると、この美女、とても怖ろしいのです。
    美女って、たいていそんなものですから、不思議でもなんでもありませんが。

そんな体験を2度、南海の海でしました。
その一つは、与論島でのこと。
    私たち夫婦の新婚旅行のときのことです。
    奄美大島、与論島に参りました。
    奄美からフェリーで与論島に着いたのは、まだ日の出前の未明。
    フェリーは、与論島の港に接岸できません。
    外洋で伝馬船に乗り換えるのです。
フェリーはかなり大きいのに、
    洋上で猛烈な上下動をくり返しています。
    その日は、ささやかながらも春の嵐だったのです。
    伝馬船がやってきました。
    とても小型、さらに激しく洋上で乱舞しています。
    この伝馬船がフェリーの下船口近くの高さまでせり上ってきた瞬間に、
    船員のかけ声とともに、船客が一人ずつ飛び移らなければならない。
    伝馬船の小さな甲板上には数人の船員が待ちかまえていて、
    飛び降りてきた船客を受け止めるのです。
空も海原も漆黒。
    船と船との間に落ち込んだら、絶対に助からない。
    もうまるで、走るジェットコースターから飛び降りるような気分でした。
ところが、このとき、どんなに怖かったか、まったく記憶していません。
なぜか?
    恐怖とか苦痛とかのマイナス感情は、それがどんなに激しくても、
    さっさと忘却するようにできているらしいのです。
    例えば、痛みの体験をあなたは覚えていますか?
    思い出すのは、痛かったという印象の記憶だけではありませんか?
    なんであれ、衝撃的な激痛そのものを正確に記憶していたら、
    記憶がよみがえる度に、死ぬ思いをしなければなりません。
    私たちはあんまり長生きでないでしょうね。
ですから、私が記憶しているのは、
    そんな下船など、二度と経験したくないということだけ。

でも、そのときの大海原の闇にのたうつ威嚇に満ちた漆黒のうねり、
    これだけは忘れることができませんね。
by Hologon158 | 2010-10-23 10:11 | ホロゴンデイ | Comments(0)