わが友ホロゴン・わが夢タンバール

193.41 ホロゴントラベル8「2005年2月25日、岡山牛窓は絶好のホロゴン日和」41 先祖伝来のあぜ道を


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列車の旅を楽しむということは、もうほとんどありませんね。
    数年前、トワイライトエクスプレスで青森から大阪まで走ったことがあります。
    突然の豪雪で飛行機が欠航したため、急きょチケットをとったのです。
    車窓からの光景は絶景でした。
季節のせいか、超人気の列車なのに、全車両で合計13人。
    密室殺人事件の現場になってもおかしくない、
    人影のない閑散とした特急が雪世界を疾走するのです。
    私たちはいわゆる二等寝室の2段ベッドの上下。
    私の地元の近鉄もそうですが、JRのチケットオフィスも、そうでした。
    近い席を順次埋めてゆくのです。
    十数両の長蛇の車両なのに、私たちのコンパートメントに相客の青年が一人。
旅なれて洒脱な人物で、おかげで楽しく話すことができました。
    これがぶすっと愛想のない強面のおっさんだったら、
    さっさと別車両に移っていたところでした。

トワイライトエクスプレスのご自慢は青空天井のラウンジカー。
    普段はいつもびっしり席を占領されて、とても座れないそうです。
    そんな特上の観覧車にひっそり夫婦で座り、
    庄内平野の穀倉地帯の雪景色を見る。
    忘れられない光景でした。

ただし、一つ気になることがありました。
    広漠たる農地は、圃場整備が完了したと見えて、
    まっすぐの立派な農道とまっすぐの畦によって、
    ほぼ同じ大きさ仕切られていました。
    見た目はすっきり、農作業も機械化されてすいすいと捗るのでしょう。
    庄内平野は、広大なる平野なので、
    昔から田は長方形に仕切られていたのかもしれません。
そこで考えること、
    全国の農地どこでもよいのですが、
    融通無碍に不定形に区分され、流線型のあぜ道がついていた時代のこと、
    たとえば、細江英公の写真集「鎌鼬」に見られたような村を思い出します。
あんな不定形の世界で農作業をしていた人には、
    現代のまるでアパートのような、特徴のない整備後の田んぼって、
    なんの楽しみを与えてくれないのではないでしょうか?

    古い曲がりくねった農道をとぼとぼと歩き、
    曲芸の綱渡りのように曲がりくねった先祖伝来のあぜ道を伝い、
    ひょうたん型の祖先伝来の田で耕作をする。
    父も夢見た、母も見た、というような気分。
    かなり心を豊かにする思いがあったのではないでしょうか?

たとえば、稲にしても、ひょっとすると、生育に違いがないでしょうか?
    管理された田と、自然にゆだねて成長する田では、ぜんぜん別の作物になる、
    ということはないでしょうか?
なぜって、人間は、大都会に押し込められて、明らかに変わりました。
    もう坂本竜馬や織田信長のような型破りの巨人は育たないかもしれません。
    人間も稲も環境に左右される生き物。
    圃場整備された農地は、
    人間にとっての大都会のようなものかも知れません。
    農作物だって、人間の合理化一点張りの耕地整理に影響を受けないはずがない。
    そんな風に感じられてならないのです。
    農作物のほとんどが、どんどん平淡な味に変わりつつあるからです。

こんな風に無理矢理に環境を管理し支配しようとする人間に、
    幾度も幾度もお天道様はしっぺ返しをしています。
    近頃の、まったく予測不能の異常気象の多発はそれなのではないでしょうか?
    でも、人間はこのしっぺ返しに気づいていない、

    そんな感じがしてならないのですが....
by Hologon158 | 2010-12-12 21:41 | ホロゴントラベル | Comments(0)