わが友ホロゴン・わが夢タンバール

195.06 ホロゴントラベル8「2010年12月5日大阪茶屋町にズミクロン50mmf2見参」6 どうしてですか?


ズミクロンで撮った写真を見ていて、思い出した人がいます。

        中平卓馬

森山大道とともに、プロヴォークの理論派写真家。
    ブレボケを表現手段として使って、一世を風靡しました。

彼の本をお読みになったことがありますか?
    とにかく饒舌で、
    とにかく理屈っぽい。
    とにかく博覧強記を絵に描いたような、写真家には珍しい理論家です。
    華麗に理論を展開し、それが果てしない。
    私には、ほとんど理解不能。
森山大道もまた大変な名文家で理論派。
    ブレボケと理論と、どちらが先に出てきたのか?
    私にはわかりませんか、
    精緻な写真理論の行き着く果てがブレボケだった!
    これはおもしろい展開ですね。
    わけがわかりませんが。

その超理論派でブレボケの中平卓馬が1977年記憶障害に陥り、
    再起不能と思われていたのに、写真家として奇跡的に復活しました。
    その後の消息を記録したドキュメンタリー番組を見た記憶があります。
たしかキャノンに135ミリを付けていた記憶があります。
    一眼レフを慎重に操作しながら、まさにロボグラフィを撮っています。
    
    自宅で小さな机にライトボックスを置いて、
    数枚のポジを並べて、ルーペでのぞいています。
    ぱっと顔を上げて、リポーターの女性に向かって一言、
        「これがいい」
    リポーター、のぞいてみて、尋ねました、
        「どうしてですか?」
    その次の一言が傑作、

        「ちゃんとピントが合っている」

    のけぞりました。
    こんなせりふを吐く地上最後の人物と思われていた写真家の言葉でしょうか?

この言葉、むしろ私にはとてもふさわしいですね。
    私は、原則として、どんなレンズも被写界深度で撮っています。
    パンフォーカスが原則。
    手ぶれしない限り、必ずピントが合っています。
でも、ズミクロン50mmf2は、f4を基準に、ピントを合わせながら撮りました。
    スキャンをして、まず確認していったのは、
    ピントが合っているか?

中平卓馬は、今はどうか知りませんが、
    復活後、これまでと異なるコンセプトで新しい写真を撮っていたようです。
    ロボグラフィとどう違うか、なんてことはどうてもよろしい。
    私のロボグラフィは、ただの路傍写真の隠語みたいなもので、
    写真コンセプトではないのですから。
中平が、ブレボケから180度転進して、即物的なものに集中したことは、
    ひょっとすると、写真から社会性、プロテスト、メッセージをはぎ取り、
    純粋写真に回帰したいという気持ちだったのでしょうか?
    中平のことですから、きっと絢爛豪華な理論展開をしているでしょうけど、
    つまるところは、即物写真。

    私は、これが大好きですね。
    私もそうだからで、深い理由はありませんが。


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by Hologon158 | 2010-12-17 18:50 | ホロゴン外傳 | Comments(0)