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248.10 ホロゴン外傳19「2011年6月5日 キノプラズマートが安土に出会った日」10 クレーの返事



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No.6に、モーツァルトが、創作活動をしていないときに、
とても軽い人物だったことについて、私の考えるところ、
彼の創造性を維持するための防衛行動だったのでは、と書きました。

パウル・クレーにも似たような事情があったようです。

クレーはバウハウスの有力な教師だったのですが、
2週間に1度しか授業をしなかったそうです。
要するに、勝手にやりなさい。
そして、スイス、フランスに出かけてしまいました。
学校は当然腹に据えかねて、学校に戻るように電報を打ちました。

クレーの返事が傑作です。

「私は主として絵を仕事とする画家であります。
教師として難しい職務を義務的に受け入れる危険をおかしたのですが、
そこでの地位は、ある条件のもとで創造的活動とのバランスを
保つことによってのみ可能な職務であります。
これらの条件というのは、私の教師活動がそれ自体生産的であるということと、
休暇の形での息抜きが可能だということなのです。
10月3日には必ず戻るつもりでいます」
こうして、さらに2週間、休暇をかってにのばしてしまったということです。
(スザンナ・バルチュ「パウル・クレー」Tschen)

就任にあたってつけた条件ではないようです。
自分でかってにつけた条件に基づいて、
かってに休暇をとっていたわけです。

要するに、創作活動と休暇を優先的にとり、
時間が余ったら、教師活動もする、というスタンス。
うらやましいですね。

クレーは、自分が設定した条件が、世間的にも契約上も通用しないことなど、
ぜんぜんお構いなしですね。
これが芸術家なのでしょうか?

創造活動をするためには、なにかに縛られていてはできない。
だから、モーツァルトも世間体も富も栄誉もお構いなしに、
ずっと自分であり続けました。

現代では、どうなのでしょうか?
モーツァルトやクレーのような芸術家が生き延びることなど、
許されないのではないでしょうか?

とくにインターネット通信、Twitterのようなマス通信が、
芸術家たちの活動を激しくチェックし、つるし上げしてしまいます。
万人に愛され、万人に支持される芸術家なんて、いません。
必然的に、中傷、誹謗攻撃にさらされる羽目に陥ります。
毀誉褒貶が、電報ゲームよろしく、
あっという間に肥大化し、深刻化してしまいます。

自分と異なる人間を許さない偏狭な人が、
見境なしに勝手気ままに筆誅を加えることができる時代。
匿名の陰で、名誉毀損行為をほしいままに楽しめるのですから、怖い時代です。

偉大な芸術家が有形無形の波状攻撃にさらされるとき、
常人よりもはるかに高くナイーブな感受性が裏目に出て、
深刻な精神的打撃を受けてしまいます。

もしかすると、現代は、
人間の自由が消失しつつある最後の時代かもしれません。
by Hologon158 | 2011-07-15 18:03 | ホロゴン外傳 | Comments(0)