わが友ホロゴン・わが夢タンバール

265.28 ホロゴンデイ76「2006年11月9日故郷大和高田にホロゴンとお忍びで」28 コントロール



山本眞弓さんの写真展で一番印象的だったことは、

    コントロール

突出して、自己主張をする写真がないのです。

    「凄いスナップも一杯あるんだけど、みんな外しました」


チームプレイできる写真だけに絞ってゆくという作業は、
かなり苦しかったのではないかと推測します。
人に見せたい作品がどんどん外れてゆくのですから。
でも、これが写真家ですね。

東京展で、幾人もの人からこう言われたそうです。

    「写真を見て、てっきり男性が撮ったと思いました」

こんなことをおっしゃるのは、きっと年配の男性ですね。
分かっていない。
現代では、女性の方がずっと気合いが入っていて、強靱です。
山本さんは、そんな女性の中でも突出するほどの気合いの持ち主。

今回の写真展で、そんな風に思うのなら、
本領のスナップを見たら、ぶっとんでしまうでしょう。

でも、写真展の場合、観る人に、
写真の内容よりも写真そのものに注目させるようでは、
成功とはとても言い難いのではないでしょうか?
ある雄弁な講演家が、かなり力を入れた講演が済んだ後、
感激の面持ちで近づいてきたご婦人からこう言われたそうです、

    「とても魅力的なお声でした」

心底、がっくりと気落ちしてしまったそうです。

写真展もそうです、

    「あの一枚が好きです」

なんて言われたら、ニコンサロンの写真展ではアウトですね。

今回の写真展では、横位置が主題を展開し、
縦位置がアクセントを付ける、そんな役割を担っていたようです。
縦位置は、主題をはっきりと打ち出せる点で、強い写真になります。
横位置写真の中には、両側を切って縦写真にしたら、
もっと強烈な写真になるだろうと思われる写真が幾枚もありました。

でも、その余白を使って、写真の背後に広がる弘法市の世界を
観る人に大きく広く感じさせながら、
観衆の視線を自然に次の写真へつなげることができる、
これが横位置写真の強みではないでしょうか?

    写真家としての節度、コントロールが印象的でした。

写真展は、最初の一枚から始まって、
1、2、3面と、風の化石と化したものたちが華麗に展開し、
最後の4面目に至って、次第に無常の気配を強めてゆきます。
最後から2枚目で、燈籠たちが、死屍累々の風情で横たわり、
寂滅為楽の境地を描いた後、
最後に、黄昏つつある空の下、弘法市が続くなお遠景が来て、
諸行無常を経て、輪廻転生につながる予感を残して終わります。

山本眞弓さんのお話では、
最後の壁面がおとなしすぎるという意見を多くもらったそうですが、
私は、そうは思いません。

むしろ諸行無常の写真展が最後に華麗なカデンツァを奏でるのは、
なんだか場違いではないかという感じがします。

写真展全体の印象を観る人に強く刻みつけるのが、
ラストの壁面の役割であるとすれば、
次第にディミヌエンドして行く、無常感を醸し出す作りこそ、
ふさわしいのであって、
写真家はご自分の仕事をしっかり理解してお作りになった、
そうお見受けしました。

次の写真展が今からますます楽しみな写真家です。



265.28 ホロゴンデイ76「2006年11月9日故郷大和高田にホロゴンとお忍びで」28  コントロール_c0168172_11133894.jpg

265.28 ホロゴンデイ76「2006年11月9日故郷大和高田にホロゴンとお忍びで」28  コントロール_c0168172_11133186.jpg

265.28 ホロゴンデイ76「2006年11月9日故郷大和高田にホロゴンとお忍びで」28  コントロール_c0168172_1113232.jpg

by Hologon158 | 2011-09-11 11:16 | ホロゴンデイ | Comments(0)