319.21 ホロゴン外傳40「2012年4月21日パンタッカーも十三を闊歩した」21 名人芸は心を
階段のスイッチの写真で思い出したことがあります。
いつの年のニューイヤーコンサートか、忘れました。
首席フルーティストのヴォルフガング・シュルツが、
最後のピアニッシモのサウンドを響かせた直後に、
右手小指をすっと立てたのです。
とても粋な仕草で、満場がわっときました。
個人プレイだ、ですって?
そうかも知れません。
でも、2つの効果があったのではないでしょうか?
聴衆の心がほぐれ、
演奏への集中力が高まった。
だとすれば、個人プレイではないのです。
名人芸
この小指が吉田正さんの写真のスイッチでは?
美しいリズムと描線を描いて下降してくる階段。
もう終わろうとするところに、小さなスイッチ。
写真が平坦から立体へ、
静寂から音楽へさっと変容します。
沈黙の鏡面の池で鯉がちょっと跳ねた音、
その瞬間、鏡面は美しい波紋に変わります。
そんな効果。
名人芸は心を醒まし、心を溶かすのです。
音楽では、小さな小さな1つの音にも心を集中させ、
写真では、写真の隅々まで心を配るようにさせる、
それが名人芸なのではないでしょうか?
by Hologon158
| 2012-05-07 17:49
| ホロゴン外傳
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