わが友ホロゴン・わが夢タンバール

319.23 ホロゴン外傳40「2012年4月21日パンタッカーも十三を闊歩した」23 回顧展をする(2)



野球ファンではないので、完全なうろ覚えなのですが、
日本シリーズでこんなことがあったそうです。

    9回裏、大差を付けていた(確か)巨人の監督、
    2アウトをとって、「これでいただきだな」とかなんとか、
    回りに聞こえる声でつぶやいたそうです。
    ところが、その後、大逆転され、
    そのままシリーズまで落としてしまったそうです。

守備についていた投手、野手たちにまで聞こえたはずがないのですが、
要するに、これが監督はじめチーム全員の気持ちだったのでしょう。
でも、そう感じた途端、わずかに生じた気の緩みが小さな亀裂を招き、
その直後に打たれると、平常心を失い、
もう歯止めがきかなくなったのでしょう。

偉大な画家たち、ゴッホ、ゴーギャン、モジリアニ、いくらでもいます、
生前ほとんど名声を博することができなかった画家たちは、
死ぬまで必死の苦闘を続けました。
だから、彼らの生涯には、創造性の緩みなどありません。

どんなに才能のあるアーチストも、生前に頂点に立つと、
攻めの立場から守りの立場に立ってしまい、
ハンニバルのアルプス越えや、毛沢東の大長征のような、
自ら死地に陥れるような乾坤一擲の勝負に出ることが
できなくなってしまいます。
ピカソでさえそうでした。

そして、驕りはもっと怖ろしい。
ただしく企画された写真展、写真集でないと、
自分の意図はただしく理解してもらえない、
このあたりまえの真実を忘れてしまい、
自分はどんなことをしても、ファンは熱狂する、
と言わんばかりに、大きな企画を人任せでやってしまう。
豊臣秀吉の朝鮮征伐、ナポレオンのロシア遠征がそれです。

大回顧展がその類の回復不能のダメージを与えたのでなければよいのですが...
(この大回顧展がどんな世評を生んだか、私は知りません。
大好評裡に終わったのかも知れません。
でも、私はそんな評価が正しいとはまるで信じません。
「裸の王様」を観て、裸に気づかないなんてねえ.........)

大きな展示室の壁面一杯を大伸ばしで埋めた展示と、
小さなギャラリーの壁面に展示された吉田正さんの小さな作品群、
どちらが私に衝撃と感動を与えたか?

答えは書くまでもありません。

    あなたのお腹に広い板を置いて、
    その上に象が片足をそっと載せます。
    1トンほどもある重さ、だけど、
    あなたは圧迫感を感じるだけ。

    次に、あなたのお腹から板を取り除いて、
    腹の上に錐を置いて、そっと押すと、
    お腹に突き通ります(こわーい!)。

写真展も同じですね。
有名なギャラリー壁面に大きな写真をびっしり並べたらいい、
なんてものじゃありませんね。

自分の写真にふさわしいフォーマットで揃えた作品を、
ふさわしいギャラリーに、ふさわしいプレゼンテーション、
これが腹の上の錐ですね。
見る人の心にまっすぐ通ります。

あなた、どんなに有名になっても、
このことを忘れないようにお願いしますね。



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by Hologon158 | 2012-05-08 00:34 | ホロゴン外傳 | Comments(0)