わが友ホロゴン・わが夢タンバール

431.11 ホロゴン外傳109「2013年4月13日 ビオゴンが京北野天満宮界隈を楽しんだ」11 鬼気迫る


前回のフォン・クルック将軍、
部下の将校たちの注視する中、
なぜあんな鬼気迫る所作をしたのか?

もちろん私はこの人も、この人の精神状況もなにも知りません。
でも、バーバラ・タックマンが提供してくれる歴史的状況だけにも、
なんだか分かるような気がします。

8月30日の出来事でした。
すでに開戦後約1ヶ月が経過して、
ドイツ帝国の第一軍の所期の目的を達することは困難になりつつありました。
第一軍はフランス海岸部を席巻して、
パリの西から東に大きく周回する作戦でした。
でも、すでに兵士は疲労の極致にあり、
しかも人的物的資源は次第に払底しつつありました。
フランス軍が独仏国境の東部で猛烈に攻勢をしかけたため、
ドイツ帝国軍の総司令部はフォン・クルック軍のテコ入れどころか、
右翼(西側)の兵力を削減して、左翼に投入することを余儀なくされてしまいました。

軍隊の攻撃力は投入される兵力の厚みで決まります。
第一軍を含むドイツ帝国軍の右翼は人的物的補給を十分に受けないまま、
疲労困憊した現勢力だけで作戦遂行を余儀なくされ、
次第に各軍団の間にぽっかりと空白ができてしまいました。

当たり前です。
タイトに引き締まった独仏国境に集結したドイツ帝国軍が
フランス国内に攻め込んだのですから、
戦線が広がれば、それだけ兵力を新たに増強しなければ、
衝撃力は半減してしまうだけ。
結局、ドイツ帝国軍には、それだけの余裕はないまま、
高望みの作戦を敢行したのです。

8月30日、別荘に到着したフォン・クルック将軍の心を埋めていたのはただ一つ、
どうすればこの窮境を打開できるか?

A案
所期の作戦を続行すれば、ドイツ帝国の各軍団の間隙はますます広がって、
間隙に付け入ったフランス軍によって分断されてしまう。

B案
さりとて、ぐるりと大きく周回してパリを巻き込むコースをあきらめ、
併走する他の軍団と合体して、緊密な戦闘隊形を組むため、
海岸沿いの南進を断念し、パリの北側でぐるりと東に周回すると、
パリを防衛するフランス軍に腹背をさらすことになる。

ほかに道はない。

フォン・クルック将軍はこのとき、
罠に落ちて行き場を失った猛虎の心境だったのです。
それがぐるぐる回りに現れてしまった。

最後に、ストップし、恐ろしい姿でポーズを決めます。
このとき、決断したと書ければ、ドラマチックなのですが、
そんなことは知るべくもありません。

   でも、将軍には分かっていたのです。
   A案は絶対に実現不能であることが。
   第一軍だけがぐるりとパリの背後に回り込んでも、
   友軍との連携を失った疲労困憊した第一軍に、
   パリを一蹴する余力など残るはずがないのです。

彼にはB案しか残されていなかった。
でも、それもすでに疲労困憊した第一軍には致命的な態勢であることは
変わりがありません。
フォン・クルック将軍にはそれが誰よりも分かっていたはずです。

   とすると、最後のポーズは、覚悟を決めて、
   「ええい、どうでもなるようになれ!」

歴史を勉強して分かることが一つあります。

   戦いはいつも我慢した方が勝ちなのです。
   今回は、我慢できなかったのはドイツ帝国軍でした。

ドイツ側は、左翼はだんだんと退却して、フランス軍を深みに誘い込んで、
がっぷり組み合って動きがとれなくなったところへ、
右翼の第一軍らが背後から包囲作戦を行って、
史上空前のせんめつ戦を敢行する予定でした。
一方、フランス軍は、あくまで正面突破作戦にこだわっていたのですから、
ドイツ側の期待する動きをとることは間違いがありません。
ドイツ軍左翼が我慢をすれば、
カンネーにおけるハンニバルの歴史的勝利を再現できたかもしれないのです。

ところが、ドイツ軍左翼の指揮官は攻撃しか知らない人間でした。
逆に突撃を敢行したのです。

ところが、ルイ14世の時代からナポレオン時代まで、フランス陸軍には定評がありました。
ドイツ軍左翼は失敗して、戦線が崩れる危険が出来してしまいました。
ドイツ総司令部はかくして、目の前の苦境に耐えきれなくなって、当初の作戦を変更し、
正面衝突の戦場に兵力をつぎ込んで、
当初の迂回作戦を二の次にしてしまったのです。

ドイツ帝国のフランス制覇の立役者、
歴史に残る名将の名をほしいままにできたはずのフォン・クルック将軍の無念は
いかばかりであったことでしょう?
将軍の恐ろしい所作にはその無念さが一杯に詰まっていたのかもしれません。

私は戦争など好きではありません。
現在の平和憲法は世界最高の憲法だと信じる人間です。

でも、人間の本性が現れるのは限界状況においてであり、
中でも戦場においてですから、
人間を知るうえで、戦史はとても役立ちます。

もう一つ、戦争の歴史で学んだことが一つあります。

戦争は、ほとんどの場合、密かな私利私欲にかられた支配層が引き起こしますが、
その支配層が戦場で火の粉をかぶることはほとんどありません。

血を流すのも泣くのもいつも国民。

いつしか脱原発の旗は降ろされ、
原発をいっこうにやめようとしないのも、
背後に、原発によって莫大な利益を得、脱原発によって莫大な損失を被る
原発製造者(アメリカ)、電力会社(日本)が猛烈な攻勢をかけているから。

同様に、自民党がしきりに憲法改正、軍備増強、海外戦争への道を探っているのも、
その背後に日米の軍需産業が猛烈な攻勢をかけているからなのです。

彼らは誰も、
日本の平和の確立、日本国民の平安な未来の確保など気にかけていません。
まず、自分たちの繁栄を確立すること、これだけが目標。

原発を再開し、強大な軍備を確保すれば、
恒久的な供給による恒久的な利益を確保できる。
あとはどうなと知ったことか、
また、そのときに利益を得る道を考えるだけ、
これが彼らの姿勢です。

むざむざと口車にのって、原発再開、戦争肯定への憲法改正に乗ったりしたら、
国民はフォン・クルック将軍と同様に、いつか地団太踏むことになります。

   自分の家の近くの原発がメルトダウンしたらどうなるか?
   自分がミサイル飛び交う戦場に放り込まれたら、どうなるか?
   そのことをしっかりと頭に思い描いて、
   それもよし、自分も、自分の家族も、愛する人たちもそうなってもよし、
   そう決断できるなら、賛成しましょうね。
   自分はそんな被害には遭わないから、賛成、
   それじゃ、あまりにも無責任です。




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by Hologon158 | 2013-04-27 19:16 | ホロゴン外傳 | Comments(0)