わが友ホロゴン・わが夢タンバール

5 コンタックスT2よ、君は小さな巨人だった!


「レインフォール」
実は、私が撮った最上のスナップ写真はこれだと考えています。
1992年8月に撮った写真です。
当時、いわゆるアマチュアカメラマンとしてがんばっていたのです。
イングランド中西部の町、チェスター。
この小さな中世都市に着いたのは前日の午後4時頃でした。
晴天なのに、中心の「ザ・クロス」と呼ばれる十字路の石畳は雨で濡れていました。
ピンと来ました、
ははーん、夕立が来たんだ、雨の写真が撮れるぞ!
当時は、頭を使って撮っていたのですね。
翌日、午後3時頃、ザ・クロスの2階プロムナードで待機しました。
チェスターは、中世時代、お店が並ぶ回廊を2階に設けていたのです。
果たせるかな、突然、激しい夕立が襲来しました。
持参のコンタックスRTSⅡを構えました。
あかん、シャッターが下りない!
知らぬ間にフィルムが終わっていたのです。
とっさに腰のコンタックスT2を取り出し、絞りをF8に設定しました。
シャッター速度は30分の1秒だったと記憶しています。
手ぶれが起こらない限界で、走る人がぶれる程度。
雨雲は西から東に猛スピードで移動し、西側から晴れて来ました。
突然、金髪ワイシャツ姿のサラリーマンが建物の影から飛び出してきました。
とっさにシャッターを切りました。
雨脚はなかなか撮れないものですが、この写真ではしっかりと写っていました。
西から陽光が射し込んで、建物をバックに、雨脚を照らし出したからです。
当時属していた写真クラブの写真展に全紙に焼いて出しました。
大伸ばしをしてもポジの画像がいささかも劣化することなく、
両下隅から最深部までのパンフォーカスが見事なまでに立体感よく伸ばせました。
一眼レフ用レンズに優るとも劣らぬゾナーの実力をこのときはじめて思い知りました。
当時、属していた全国規模の写真組織の県月例会にも出してみました。
選者の写真家の選も仲間の互選も1位でした。
後ろに座るスナップ名人を自負するメンバーのちょっと悔しそうな言葉、
「10年に1枚の写真だなあ」
選者、「違いますよ、一生に1枚の写真ですよ」
すると、先ほどのメンバー、今度は本気で悔しそうに2度つぶやきました、
「ああ、運だなあ、運だなあ!」
私はこのとき心の中で考えたものでした、
とんでもない、運じゃないよ!
このとき、この場所に居ても、どの方向に、どんなレンズでどう撮るか、
すべては撮影者の選択にかかっているのだから、
運だけで写真は撮れないよ!
今でも、この種の写真は運だけでは撮れないと考えています。
でも、こんな写真が大好きだった私は遠い過去の私になってしまいました。
今では、ホロゴンでひたすら運だけを頼りに撮っているのですから。
人間変われば、変わるものですね。


5 コンタックスT2よ、君は小さな巨人だった!_c0168172_218546.jpg


     [メモ]
      本記事は「ホロゴン讃歌」の記事をアレンジしたものです。
      これから、こんな風に再録につとめ、
      いつの日にか、私のホロゴンブログを一本化するつもり。
by Hologon158 | 2008-08-14 21:14 | ホロゴン外傳 | Comments(2)
Commented by salty at 2008-08-14 23:36 x
この写真は印象的で、私も忘れれれません。
Commented by Hologon158 at 2008-08-15 00:58
re)Saltyfishさん
そう言っていただければ、嬉しいですね。
このワイシャツ姿の金髪青年、今どうしているでしょうね?
ファーオリエントで、自分が写真になっていると知ったら、
びっくりしちゃうでしょうね。
それとも、私たちも、どこかで写真を撮られて、展示されているかも?
この旅行に同行したご夫妻(2人とも医師)、練達のカメラマンでしたが、
すでに隠退され、写真も撮っておられないようです。
今年の夏は異常なほどの暑さ、太陽の照射もひときわ激しい。
でも、私は苦になりません。
その下を歩きながら、いつも、こう考えているからです。
「このお天道様の下、堂々と歩ける!
これ以上幸せなことがあるだろうか!」
ぶったおれるまで、写真を撮り続け、ついでにブログも続けたいものですね。