わが友ホロゴン・わが夢タンバール

22. 5ホロゴンデイ6「2005年10月22日京都下町」5 ただ接近するだけで写真撮る人って、苦労知らずだよね


先々週のことでした。
揚琴のレッスンで、先生からこう言われたのです。
「どうしてもっと動かないのですか?
出したい音の方向に向かって身体を持って行ったら、
もっと楽に弾けるのに」
揚琴は、各調性ごとにおおむね4オクターブの音階をカバーします。
音のポイントが横5列の弦に規則正しく並び、
3音と4音の幅で右から左へ斜めに上ってゆきます。
揚琴上での広さはおよそ45センチから50センチ四方。
その範囲に点在するポイントに、
30センチ弱の長さの細い細い琴竹を飛ばして、
その小さな先端部が弦を一瞬叩いて反騰する、これが弾き方。
そこで、いつもポイントと身体の距離が均等になるように、
身体を前後左右に移動させながら、弾くようにしてみました。
その三日後、二胡の偉大な演奏家のコンサートに行き、
伴奏をする著名な揚琴奏者張林さんの演奏を見ました。
その動きを頭に収めるようにつとめました。
翌日、マネをして弾いてみると、
それ以前とまったく音が一変、もっと滑らかに弾けるように。
すべて完全に唯我独尊的主観的な印象なので、割引して聞いてください。
昔、60を超えて現役の、アマチュアテニスの名人が居ました。
プレイをしたことのある人がこう言っていました。
「いつも不思議とこちらのボールが落ちるところに居るんだよ。
それもごくゆったりと動いているのに」
こんな話を連ねてゆきますと、
どうやら写真だって同じじゃないかなという気になっていました。
私の友人にもそんな名手たちがいます。
複数の人がもっとも絶妙に絡み合う姿が撮れる位置まで、
身体がすっと動き、なんとも自然な動作でシャッターを落としてしまいます。
洞察力、経験、センス、勘、知識などが一体となって、
絶妙のフットワークを生み出しているのです。
でも、自分もそれと意識していないし、人もそれを探知しないのです。
カルティエ=ブレッソンや木村伊兵衛。
結局、写真というものは、
正しい時に、正しい場所に移動して、その瞬間にシャッターを切る、
そんな一連の動作によって生み出されるようです。
こうした往年の名人たちの離れ業が伝説と化してしまった理由は明らかです。
ズームレンズとオートフォーカス。
この2つの新技術がフットワークを忘れさせてしまったのです。
労せずして、いかにも手慣れたスナップが大量に生み出されています。
たくさんのアマチュアが心密かに考えています、
「カルティエ=ブレッソンなんか古い、俺の方がずっと上だ!」
おっとどっこい、あんた、うぬぼれるんじゃないよ!
なにかが違う、いや、なにもかも違うんだから。
撮影者の軽やかなステップの音、風切り音、
実際には聞こえないけど、心理的には聞こえる、
そうした音があんたの写真の中には聞こえないよ。
さて、私はホロゴンという単体レンズですが、
そんなフットワークとは無縁。
ただずかずかと近づいて、ただ撮るだけ。
今回も、そんな写真を三枚。
家の正面風景です。
技巧零、誰でも撮れます。
それでも私には大切な写真たち。
なにしろ、「来た、見た、撮った」私日記なのですから。

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by Hologon158 | 2008-09-06 00:58 | ホロゴンデイ | Comments(0)