わが友ホロゴン・わが夢タンバール

26.14 ホロゴンデイ7「2005年5月29日の滋賀五個荘町」14 佐伯のマネをするのはやめよっと!


まだ、佐伯祐三のことを考えています。
1928年、パリ近郊の村で描いた「煉瓦焼」という作品。
私は、この作品の前で動けなくなりました。
煉瓦工場だけがどーんと画面を支配している、
稚拙とも言いたくなるほどに、立体感のない、平面図。
だのに、こちらに向かって、ぐんぐん迫ってくるのです。
それ自体煉瓦でできた煉瓦工場ですが、不思議な形をしています。
ど真ん中に黒の太線で輪郭を描かれた白壁があって、
その中央が窪み、煉瓦を積み重ねたような開口部があります。
ここが窯と、その口でしょうか?
両側に、左は階段、右は傾斜路で昇ってゆく入り口があって、両眼のようです。
覆い被さる三角屋根はぐいっと惹かれた黒の太線だけ。
屋根の下の三角形の壁は赤。
屋根の上には、深い碧空が拡がっています。
ここでも、白、赤、黒とそれに濃紺、ただこれだけの色が
この絵をぎっしりと凝縮したエネルギー体に変容しているのです。
なんでこんなに力がみなぎっているのだろうか?
なんでこんなにぐいぐいと迫ってくるのだろうか?
天才だからだ!
なんて言ってみても、始まりません。
同じ人間が同じように手で、絵の具を使って描くだけなのに、
なんの意味も価値も認められないただの絵と、
見る者の存在価値、生きる意味まで問うほどに、
強烈な呼びかけをする絵があるのは、なぜなのでしょうか?
「お前は、やるだけのことをやっているのか?」
「お前は、生きているのか?」
やるだけのことをやっているとはとても言い難い私です、
ただ凝然と立ちつくすだけ。
ここで思い出しました。
たいていの哺乳動物の心臓の鼓動回数、生涯の総数は似ているそうです。
短命な動物はそれだけ猛烈な鼓動回数で新陳代謝を高速化するのだそうです。
人間の中にも、
そんな風に短い生涯を猛烈な速度で生き抜いてしまう人がいるのかもしれません。
モーツァルト、シューベルト、ラファエロ、佐伯はそんな超高速人だったのかも?
でも、超高速人だけが生きているわけではないのでして、
逆に、超低速人だって、それなりの人生、それなりの生きる意味があるのではないでしょうか?
そんな超低速人にはホロゴンが似合うようです。
あたり一面、全部引き受けちゃいましょうという包容力、
凝縮はないけど、許容、許し、和解の境地。
本日は、ちょっと言い訳めいた文章になりましたが、
畦あたりで、そんなやさしい情景を選んでみました。
こちらは、ただ撮っただけで、ちっとも人を驚かせませんが、
心を落ち着かせてくれる効果はあるのではないでしょうか?

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by Hologon158 | 2008-09-15 10:57 | ホロゴンデイ | Comments(2)
Commented by fwkp6043 at 2008-09-15 21:00
1枚目の、色の出方が好きです。4枚目の切り取り方が好きです。
とても素敵です。
沢山の文章量でなかなか追いつけません。(=^エ^=)
Commented by Hologon158 at 2008-09-15 21:09
re)fwkp6043さん
1枚目と4枚目、どちらも私の大好きなショットなので、
そう言っていただけると、嬉しいですね。
どちらも、草や苗たちが踊っていますよね。
文章、気にしないでください。
これは、ぜんぶ、私が書きたいから、書き散らしているだけなのです。
お付き合いいただけたら、ありがたい、
だけど、お付き合いはほんとに大変だろうなと、
自分の責任なのに、同情してしまいます。
どうせ私には、読んでもらえたかそうでないか、わかりっこないのですから、
いい加減にお付き合いください。
写真をしっかり見ていただければ、これが最上の喜びなのです。