わが友ホロゴン・わが夢タンバール

35.2ホロゴンデイ14「2007年3月7日の宇治」2 暖簾に腕押し、お茶を濁す風写真でもうしわけありませんが


随分前、まだカメラ雑誌をせっせと買い求めていた頃、
その誌上コンテストで見た特選作品を思い出しました。
夜の飲み屋街とおぼしき、まさに夜の巷。
男がどうやら道ばたに座り込んで、うつろな眼。
涙があふれ出し、頬をぬらしています。
その顔だけをネオンの輝きを背景に撮ったカラー写真。
失恋したのでしょうか?
うーん、実に雰囲気が良く出て、見事に撮ったものだなあ!
最初は、感嘆しました。
でも、よく見る内に、なんだかおかしいぞ。
標準レンズで斜め下から撮っているのに、両目にピントが合っている。
撮影距離はどう見ても、1メートル以内。
ASA感度400の時代です、三脚を付けて撮っていることは明らか。
これが忍びよって撮ったものだったら、
男はもちろんこれに気づかないはずがありません、
鬱屈した心は、心ない出歯亀野郎に向かって爆発!
「おれが泣いているのに、なんだあ!
おれは見せ物かあ!」
カメラ、ガチャン!
もうお分かりですね。
完全な演出写真なのです。
もちろん演出が悪いとは言いません。
たとえば、ファン・エルスケンの最高傑作「セーヌ左岸の恋」は、
一人の女性を密着取材したと言いますが、
ローライ二眼レフの最短距離で撮っているのです。
はっきり、演出。
荒木経惟の出世作「センチメンタルな旅」も、
ご自身の新婚旅行の記録ですが、
これも、完全な演出。
誰が新婚のベッドに一眼レフを持って入りますか?
これが写真家の制作なのですから、誰も文句のつける筋合いではありません。
でも、私は、ノーメイキングを通したいのです。
なぜなら、私の写真は「制作」ではないからです。
うん、これはいい!
そう感じた自分自身のまさに「キャンディット(正直)な」気持ちを、
そのまま写真にしたいのです。
本日もそんな写真を2枚。
暖簾に腕押し、お茶を濁す風写真でもうしわけありませんが、
すくなくとも、演出写真でないことはお分かりいただけますね。

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by Hologon158 | 2008-10-25 10:49 | ホロゴンデイ | Comments(0)